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「精神安定剤」という言葉の功罪 アーカイブ

2008年12月15日

「精神安定剤」という言葉の功罪 (1)

先日,外来中に,患者さんからの電話を受ける機会がありました。
私の担当患者さんではありません。
私が勤めている病院に通ってきている患者さんでもありません。

心療内科を標榜する他のクリニックにかかっているのだが,治療内容や説明に納得がいかないのでセカンドオピニオンを得るためにこちらの病院を受診したい,という内容でした。
少し込み入った話だったので看護師さんでは対応が難しかったようで,たまたま手が空いていた私にお鉢が回ってきたというわけです。

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聞いてみると,あまり良くない意味での「よくある話」でした。
その患者さんは二十代の女性で,3ヶ月ほど前から現在のクリニックに通っているのですが,先々月から,それまで規則的だった月経が止まったために婦人科を受診したところ,「心療内科から処方されている薬の副作用でホルモンのバランスが崩れているためだと思われる」,と告げられたのだということです。

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2009年01月24日

「精神安定剤」という言葉の功罪 (2)

精神科や心療内科にかかられている患者さんは、薬を処方されるときにどの程度の説明を受けているでしょうか。

精神科・心療内科領域では、このあたりのインフォームド・コンセントが時に非常にいい加減に行われている現状があり、「安定剤」という用語はそれにひと役買っているように私には思われます。

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診断がうつ病だろうと統合失調症だろうとパニック障害だろうと、精神科を受診する患者さんは多かれ少なかれ精神が不安定になっているので、それを改善するための薬はすべからく「精神安定剤」である――という論法は成り立つでしょうか。

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2009年02月09日

「精神安定剤」という言葉の功罪 (3)

精神科・心療内科領域では、インフォームド・コンセントが時に非常にいい加減に行われている現状があり、「安定剤」という用語はそれにひと役買っているように僕には思われます。

内科を受診したときに、内科を受診する患者さんは多かれ少なかれ身体が不安定になっているので、それを改善するための薬はすべからく「身体安定剤」である、という説明を受け入れる方はいないはずです。

なぜか、精神科ではそれがまかり通ることが少なくありません。

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百歩譲って、向精神薬の総称として「安定剤」を用いたとしても、その後に個々の薬の作用と副作用、処方理由や標的症状についての説明が続くのであれば問題はありません。

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2009年03月01日

「精神安定剤」という言葉の功罪 (4)

広義の「安定剤」は、「自律神経失調症」と並んで、こうした古き悪き時代の精神医学の「暗黙の了解」を象徴しているような印象があり、私は個人的には好きな言葉ではありません。

で、ずいぶんと遠回りしましたが、向精神薬でホルモンバランスに影響を与えるものはあるでしょうか。
思いつくかぎり、直接的にホルモン分泌が変化するのはドーパミン遮断作用をもった薬物を使用した場合に起こる高プロラクチン血症くらいです。

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プロラクチンは乳汁分泌ホルモンのことですが、内分泌系というのは複数のホルモン分泌がたがいに影響しあうので、高プロラクチン血症によって二次的に他のホルモンのバランスも崩れます。

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