精神医学は今、大きな過渡期にあります。
治験環境は依然お粗末ですが、それでも何とか、世界標準に近い薬物療法が行えるくらいの薬物のラインナップは出揃いつつあります。
しかし、薬の玉数が多ければ治療がうまく進むというものではありません。
それを使いこなすだけの技量が医師の側になければ薬も十分には効果を発揮できないからです。
そもそも、精神疾患は薬物療法だけで治せるというものでもありません。
学問としての精神医学の進歩とともに、臨床の場においても、かつてより高い治療ゴールが要求されるようになっていくでしょう。
入院から外来へ、収容から社会復帰へ、という流れは、医療経済という側面からも、今後ますます加速していくことは必定です。
高い治療ゴールを達成するためには、患者さんやそのご家族が病気について十分な理解をし、積極的に治療に取り組む姿勢が欠かせません。
医師の側が知識や技術を磨き、精神科臨床に対する考え方を改めるのと同時に、患者さんの側も疾患を受容し、疾患について学び、本当の意味で優れた医師や医療機関を判別することが求められるようになるでしょう。
そのための取っ掛かりとしては良いテーマなのではないかと考え、ここまで19回に渡って「精神科と神経科と神経内科と心療内科」の違いについて述べてきました。
次回以降は臨床に即した、もう少し各論的なお話をしていこうと思います。
(この項終わり)
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