抗うつ薬でいえば、SSRI(選択的セロトニン)やSNRI(選択的セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)は,眠気が少ないことをセールスポイントの一つにしてきたはずです。
もちろん,旧来の抗うつ薬に比べて口渇や便秘といった抗コリン作用が少ないことも大きな利点ではありますが,鎮静作用が少ないことを、日常生活を送る上で有利に働く点であるということを,製造・販売元の製薬会社は「売り」のひとつとしているはずです。
抗精神病薬だとこの傾向はもっと顕著です。
エビリファイ(アリピプラゾール)は鎮静作用の少なさを強調して売られ,ジプレキサ(オランザピン)に至っては,対象疾患である統合失調症の症状であるところの認知機能障害を改善するので,より高い治療ゴールを目指せるとまで言い放っています。
処方する側として,新薬の長所を認めるのは吝かではありません。
たしかに,これらの薬では昔の薬に比べて眠気が少なく,適切に使用すれば患者さんの日常生活に悪影響が及ぶ副作用を抑えられるように感じられます。
しかし,であるならばなぜ――新薬が患者さんのADL(Activity of Dayly Life)の改善に繋がることを薬を売るためのセールスポイントとしているであれば何故,製薬会社は,「この薬で治療されたならば車の運転も出来ます」と言わないのでしょう。
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