それでは,適宜コメントを入れながらこの論文を要約してみようと思います。
疫学
線維筋痛症の有病率は0.7~3.3%と報告されているが,国によって調査結果がまちまちである。
(※ これは後述される線維筋痛症の診断基準の曖昧さに起因すると思われます)
男女別では明らかに女性の有病率が高い。
病因・病態
線維筋痛症の病因は不明であるが,何らかの遺伝的要因の関与は推定されている。身体的・精神的な様々なストレスが発症の引き金となりうる。
中枢神経系のセロトニンとノルアドレナリンは疼痛の抑制において重要な役割を果たすが,線維筋痛症の患者の髄液中ではこれらの神経伝達物質が減少している。
臨床症状
慢性的な全身痛:頸部や腰部を中心とした体軸に集中する傾向がある。時に皮膚に軽く触れるだけで叫び声をあげるほどの痛覚過敏(アロディニア)がみられることもある。
その他:睡眠障害,朝のこわばり,しびれ,頭痛,微熱,抑うつ,など。
検査所見
血液検査や画像検査などで,線維筋痛症に特徴的な異常は知られていない。
(※ このことは,線維筋痛症が,多くの精神疾患と同様に,類似の症状をきたしうる他の全ての疾患を除外する「消去法」によってしか診断できないことを意味しています)
<出典>
「線維筋痛症の概念と治療アプローチ」
西村勝治(東京医科大学医学部精神医学教室)
「臨床精神薬理」,2007年2月号(第10巻第2号)
次回は診断と治療の部分を要約します。
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