« 睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (15) | メイン | 睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (17) »

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (16)

応援クリックよろしくお願いしますメンタルヘルスブログランキング 現在44位↓↓

次に睡眠薬と安定剤のどちらから減量を開始するか,ですが,これもケース・バイ・ケースです。
私ならば,この患者さんの処方を一見して,安定剤の減量から開始します。

ぐだぐださんからもご質問をいただきましたが,そもそも,ベンゾジアゼピン系薬物というカテゴリーの中では,睡眠薬と安定剤の区別は恣意的なものに過ぎません……でした。
以前にも書きましたが,ベンゾジアゼピン系薬物はGABA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に働きかけてその作用を発揮します。
この,同じような化学構造と作用機序を有したいくつもの物質の中で,なぜか抗不安作用が強いものと催眠鎮静作用が強いものとがあり,前者を便宜的に精神安定剤,後者を睡眠薬と呼称してきたわけです。

最近になって,ベンゾジアゼピン結合部位に少なくとも2つの種類があることがわかってきました。
これらのサブタイプは,1つはω(オメガ)1受容体,もう1つはω2受容体と呼ばれています。
ω1受容体とω2受容体は脳内分布も,機能も異なっています。
ω1受容体は催眠鎮静作用に,ω2受容体は抗不安作用に関連しています。

従来のベンゾジアゼピン系薬物はベンゾジアゼピン結合部位のサブタイプに対する選択性がありませんが,それでもω1受容体に結合しやすいものと,ω2受容体に結合しやすいものとがあります。
ベンゾジアゼピン系薬物の中で「なぜか抗不安作用が強いものと催眠鎮静作用が強いものとがあ」ると書きましたが,その「なぜか」が,このω1/ω2受容体への結合バランスだったわけです。

>>>睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (17)


>>>「メンタルクリニック.net」トップページへ



コメント (3)

ぐだぐだ:

またまた勉強になりました。
有難うございます。

どちらの受容体に作用し易いかで(つまり抗不安作用が強いものと催眠鎮静作用が強いもので)、
いわゆるリバウンド、離脱症状の重さ、断薬の難しさ
などが変わってくるのか、気になるところです。

きりはら:

私は、精神医学ではなく障害学なので、医療モデルやリハビリテーションではなく、社会モデルとして考えています。

なので、向精神薬は1600年代の資料、風祭記に記された、宗教施設の大麻使用から一切の進化をしていない、アンフェタミンと考えています。

ゆえに、向精神薬による二次的な障害の発生が存在し、一種の薬害問題となっているように考えております。

なので、リカバリーの概念が重要となります。
今年の論文で提出しますが、向精神薬を肯定してリカバリーは無いと考えています。

反論・意見・賛成あればお願いします。

きりはらさん:
コメントありがとうございました。
またレスポンスが遅くなり申し訳ありません。

専門分野の違いのためか,行間のニュアンスが読み取れないのですが,仰っている「リカバリー」というのは薬害(本稿で言えば睡眠薬や安定剤への依存)からのリカバリーでしょうか? 原疾患そのものからのリカバリーでしょうか?

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

About

2008年02月10日 05:23に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (15)」です。

次の投稿は「睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (17)」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。