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双極性障害(躁うつ病)の診断と治療 ―典型的な治療失敗例(疑)を通じて― (5)

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双極性障害(躁鬱病)において抗うつ薬単独での治療を行った場合に現れるマイナスの結果のひとつとして、前回は「急速交代化」を取り上げました。
今回は「混合状態」です。

これまた典型的な病像が「マンガ お手軽躁うつ病講座High&Low」「マンガ境界性人格障害&躁うつ病REMIX 日々奮闘している方々へ。マイペースで行こう!」に描写されています。

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混合状態とは躁と欝が混合した状態ということで、現在主流となっている操作的診断基準であるDSM-IV-TRICD‐10では、混合性エピソードの名のもとに「少なくとも1週間の間、ほとんど毎日大うつ病と躁病のエピソードを満たす」と定義されています(かなり端折ってます。詳細はDSM-IV-TRあたりをご覧になってみてください)。

患者さんやそのご家族にとって、これはかなりしんどい状態です。

急速交代化ですら、患者さんはジェットコースターのような感情の起伏に振り回されてかなりの消耗を強いられますが、混合状態では1日のなかで躁や欝の症状が頻繁に現れ、社会適応を大きく損ないます。

 

漫画の中では(ドキュメントですので基本的に実話かと思いますが)かなり激しい混合状態のまま退院させていますが、本来これは危険な判断だと言わざるをえません。

混合状態においては自殺を含めた衝動行為のリスクが高まるからです。

これで退院させてしまうのであればそもそも入院させる必要がなかったのではないかとも思えるのですが……。


こうした、抗うつ薬単独による治療(たなか氏の場合はパキシル)によってもたらされた双極性障害の急速交代化や混合状態を改善させる決定打はありませんが、それでも悪化させない策はある……かもしれません。

少なくとも、これをやってはいけない、という禁忌肢はあります。

「マンガ お手軽躁うつ病講座High&Low」「マンガ境界性人格障害&躁うつ病REMIX 日々奮闘している方々へ。マイペースで行こう!」を読むかぎり、たなか氏に施された治療は、この禁忌肢を踏みまくりで、病状をかなり複雑化・難治化してしまっている側面があるように思えてなりません。

そうした状況下でたなか氏には境界性人格障害の診断が下され、それを標的とした治療が行われています。

「マンガ境界性人格障害&躁うつ病REMIX 日々奮闘している方々へ。マイペースで行こう!」に描かれている生活史からして、たなか氏に境界性人格障害の診断を下すことに問題はない……のかもしれませんが、双極性障害と境界性人格障害の二重診断は日常の精神科臨床ではかなり注意深く考えていかなければならない問題のひとつです。

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2008年08月15日 19:13に投稿されたエントリーのページです。

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