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双極性障害(躁うつ病)の診断と治療 ―典型的な治療失敗例(疑)を通じて― (7)

ここからはいよいよ「マンガ お手軽躁うつ病講座High&Low」「マンガ境界性人格障害&躁うつ病REMIX 日々奮闘している方々へ。マイペースで行こう!」においてたなか氏に施されている(そして現在も施されているであろう)治療の問題点について述べていきたいと思います。

双極性障害(躁うつ病,躁鬱病)がなかなか診断が難しい疾患であることは既に述べました
双極性障害と診断が付くまでは多くの患者さんが単極性うつ病と診断され,抗うつ薬単独による治療を受けます。
そのために,急速交代化混合状態といった病像が出現し,治療が難しくなることがありますが,現代の精神医学の水準では,これを,誤診に基づく誤った治療によって引き起こされた合併症と断じることは酷です。

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双極性障害患者の大多数がうつ病相で発症し,その病像を単極性うつ病と鑑別することは不可能だからです。
将来,外面に現れた症状だけからでなく,なんらかの客観的な検査所見によって精神疾患の診断が付けられるようになるまでは,この問題の解決は難しいでしょう。

よって現在とりうる最善の策は,双極性障害の診断が付いた時点で出来るだけ早く双極性障害用の治療を開始することです。

 

双極性障害(躁うつ病,躁鬱病)のうつ状態と普通のうつ病は判別がつかないほど似ていますが,双極性障害はうつ病とは全く異なる疾患であり,有効な治療法も違っています。

双極性障害(躁うつ病,躁鬱病)用の治療とはすなわち,気分安定薬(mood stabilizer:ムードスタビライザー)による薬物療法です。

現在わが国で使用可能な気分安定薬は炭酸リチウム(商品名:リーマス,その他),バルプロ酸(デパケン),カルバマゼピン(テグレトール)の3つしかありません。

米国精神医学会治療ガイドラインにおいても,わが国の治療ガイドラインにおいても,双極性障害治療の第一選択薬は気分安定薬であることが明記されています。


気分安定薬だけではうつ状態がコントロールできない場合には抗うつ薬の,躁状態がコントロールできない場合には抗精神病薬の,併用が勧められてはいますが,ベースとして十分量の(十分な血中濃度に達している)気分安定薬が用いられていることが大前提です。

気分安定薬を使用せず,抗うつ薬や抗精神病薬を単独で用いることは厳しく戒められていますし,このことは臨床に携わる精神科医ならば知っていて然るべき精神薬理学のイロハでもあります。

しかるに,たなか氏はいかなる治療を受けているでしょう。

 


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2008年08月27日 08:01に投稿されたエントリーのページです。

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