前回は、実は心療内科を標榜している医師の9割が精神科医であることを述べました。
それ故、精神疾患をわずらっている患者さんが心療内科を受診しても、「門外漢」である心療内科医による診察を受ける可能性は10%程度に過ぎず、ちゃんとした心療内科医ならばその患者さんが自分の守備範囲外であると判明した時点で精神科を紹介するでしょうから、最終的にはどう転んでも患者さんは精神科医による治療を施される理屈になります。
しかしながら、最終的には受診科が最適化されると仮定した場合でも、心療内科標榜医の9割が精神科医であるという事態は、
①精神疾患をわずらう患者さんが本当の心療内科医を受診してしまう。
②心身症をわずらう患者さんが心療内科のトレーニングを積んでいない自称心療内科医(実際には精神科医)を受診してしまう。
といった問題を引き起こしうるわけです。
①の場合も②の場合も理想的には各々適切な科を紹介されるわけですが、患者さんは本来は不必要な初診料と文書作成料(紹介状の作成料)の支払いという経済的不利益を蒙りますし、病気による心身の不調を抱えたままいくつもの医療機関を行き来しなければならないのはかなりの負担でもあります。
こうしたことが自明であるにも関わらず、何故、広義の詐称とも言い得る標榜の意図的錯誤がまかり通っているのでしょうか?