ベンゾジゼピン(眠剤、精神安定剤)を急に中断したり減量したりした場合、一般的にいちばんよく見られる離脱症状(禁断症状)はリバウンド――反跳性の不眠や不安です。
精神科の薬はクセになるか? (4)でも述べたように、ベンゾジアゼピンは鎮静を司るGABAという脳内神経伝達物質の働きを増強することで睡眠作用や抗不安作用を発揮しますが、ベンゾジアゼピンが慢性的に投与されていると脳本来のGABA神経系の働きが衰えてしまいます。
その状態でベンゾジアゼピンが急に無くなれば、GABAの働きが十分ではなくなっている脳は過覚醒状態となり、臨床的には不眠や不安を呈するわけです。
前回述べたような他科の疾患(腰痛や頭痛)に対してベンゾジアゼピンが用いられていた場合、断薬に伴って不眠や不安が現れれば、それが離脱症状であろうという見当はすぐにつきます。
腰痛や頭痛で身体科を受診した患者さんは、通常は服薬開始前に不眠や不安症状は呈していないからです。
ではベンゾジアゼピンのホームグラウンドともいえる精神科領域ではどうでしょうか。
精神疾患の多くは不眠や不安を症状として随伴し、精神科医はそれをコントロールする目的で対症的にベンゾジアゼピンを処方します。
3ヶ月間の投薬の後、すべての症状が寛解したと判断し、薬を減量・中止したら、患者さんが再び不眠と不安を訴えるようになった――。
この場合、処方医はどのように判断し、対処すべきでしょうか?