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精神科と神経科と神経内科と心療内科 (16)

竹を割ったような診断が下せることは稀な診療領域なので、告知派の精神科医といえど初めから明確な診断名を患者さんに伝えられるわけではありません。

急性期には病名告知が危険であったり、不可能であったりすることは確かにあるので、告知という行為に拘って患者さんがどんな状態であっても病名を伝えるといった機械的なやり方をとることもありません。
しかし診断が付かなくても対症的な治療は可能ですし、診断が付いても伝えられない場合には症状改善の後に診断を伝えればよいわけです(この場合には非告知派の医師と類似の治療導入法をとるかもしれません)。

ただ、薬の作用と副作用については、患者さんか、それが難しければご家族に説明します。
説明しなければ危険だからです。
比較的安全な狭義の安定剤(ベンゾジアゼピン系安定剤:ワイパックスやデパスなど)であっても人によっては脱力による転倒や、過鎮静、健忘といった副作用が出現することがあります。
以前に述べたように、一定期間服用すると依存性も問題になります。
SSRI(選択的セロトニン再取り込阻害薬:ルボックスやパキシル)では嘔気や嘔吐、性機能障害、そして何より自殺問題で注目されたactivation syndromeを心配しなければなりません。
抗精神病薬ともなれば、アカシジアやジストニア、パーキンソン症状に始まって、過鎮静や体重増加、果ては悪性症候群といった重篤な副作用までもが現れることがあります。

想定される副作用を告げ、どれが危険であってどれが危険ではないか、危険な副作用の予兆はどのようなもので、それが現れたらどう対処すべきか――それ説明しなければ患者さんは服薬を開始しても副作用に戸惑い、すぐに薬をやめてしまうでしょう。もしくは、事故が起こるかもしれません。



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2007年01月23日 03:25に投稿されたエントリーのページです。

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