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精神科の患者さんの車の運転 ⑥

添付文書の記載には医師や患者をどこまで拘束する効力があるか――これは法律論にもなってきますので私の立場で回答を示すのは難しいのですが,逆の切り口からならばいくつか述べられることがあります。

そもそも,医薬品の添付文書の「注意」は,何のための,誰のためのものなのかということです。
敢えて極論すれば製薬会社のためのものであり,厚生労働省のためのものです。

彼らが,添付文書の注意や警告は患者さんの安全を確保するためのものだと強弁するのであれば,薬によってもっと細やかに記載が異なっていてしかるべきですし,添付文書に記載するだけではなく,他の省庁と連携して(車の運転ならば運輸省でしょうか),道交法の条文で向精神薬に関しても言及するべきです。

ところが,法律の条文を変えるほどの根拠を,彼らは持っていません。
例えば,最新の抗精神病薬であるエビリファイを飲むと本当に車の運転に支障をきたすのかどうか,誰も知らないのです。
エビリファイの治験には,それを検証するための試験が組み込まれていないからです。エビリファイだけでなく,車の運転に関する注意がなされている薬の大多数でそうしたエビデンスはありません。

しかし,作用機序や副作用プロフィールからは,たしかに一定程度のリスクがあることは予想されます。
製薬会社の立場からすれば,その場合,添付文書に車の運転に関する注意を記載すべきなのです。

そうすることで,すべての責任を処方医に丸投げすることができる決まりだからです。


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2007年03月15日 22:34に投稿されたエントリーのページです。

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