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2007年04月 アーカイブ

2007年04月04日

精神科の患者さんの車の運転 ⑪

精神科の場合,患者さんの病気の症状を良くするためには(患者さんのためには,といった大それた表現はしません)薬を使いつつ適切なタイミングで社会参加を促していかなければならない場面が少なからずあります。

そうした局面において症状改善というリターンを得ようとするのであれば,リスクをとって添付文書の注意を無視せざるをえないこともあります。

問題なのはやはり現場の医者と患者さんが責任を被らなければならない制度と,自分たちがとっているリスクがどれだけのものなのか(向精神薬を服用することがどの程度運転に悪影響を及ぼすのか)が示されていないことでしょう。

かつて精神疾患の既往が自動車の運転の絶対的欠格事項から相対的欠格事項に格下げになった背景には,やはり精神疾患と交通事故の因果関係を証明する科学的なデータが無かったことと,患者さんたちの社会参加の機会を奪うべきではないという考えとがありました。

欧米に遅れをとってはいるものの新薬が治療の中心を占めるようになりつつある昨今,薬物療法と自動車の運転との関係についても改めて考察がなされるべきでしょう。

(この項終わり)


追補:このような判例を見るに,規定量の向精神薬を服用して車を運転することで法的責任を問われることはないのかもしれません。行政よりも司法のほうが法律を柔軟に解釈してくれるのでしょうか。


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2007年04月11日

季節の変わり目

そういう先入観があるからでしょうか。やはりこの時期は忙しいような気がします。
以前たわむれに数えてみたところでは,私の職場では,他の月に比べて特に4月に外来患者数や入退院数が多いというわけではありませんでしたが。

一人一人の患者さんの診察にかかる時間が長くなってるんでしょうかね。

季節の変わり目というよりは,年度替りの季節ということで,3~4月は環境の変化が大きい時期です。
患者さんも進学や進級,就職や昇進,転属などがありますし,医療者側も転勤やら異動やらがあります。
患者さんの調子が崩れても不思議ではありませんし,それがなじみの薄い医療者側にうまく伝わらずに問題がこじれるという要素もあるかもしれません。

疾患の基盤は生物学的なものであると考えられるようになり,治療の多くの場面で薬物が重要な役割を果たしている一方で,やはり精神科の病気は人間関係で発症・悪化し,人間関係で治るという側面が色濃くあるように思われます。

ここからゴールデン・ウィーク明けの5月までが,少なくとも主観的にはもっとも忙しい季節の一つです。

まあ,頑張りますよ。


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2007年04月26日

線維筋痛症 (1)

本日の日経オンラインに,「線維筋痛症、一般医の25%が病名知らぬ」というタイトルの記事が掲載されていました。

藤田保健衛生大の松本美富士医師が4月26日,横浜で開催中の第51回日本リウマチ学会総会・学術集会の一般口演で報告した内容をまとめたもので,松本医師の報告によれば,線維筋痛症の患者が受診する可能性がある10種類の標榜科のプライマリケア医約3000人を対象とした調査において,疾患概念まで認知していると答えた医師は全体の32.2%,病名は知っていると答えたのは38.4%で,28.4%は病名すら知らないという結果であったということです。

この記事は私にとってはなかなかタイムリーなものでした。
実はちょうど今,線維筋痛症が疑われる患者さんを外来で診ているのです。

ちなみに私は,松本医師の調査における多数派――「線維筋痛症の病名は知っている(が,詳細な診断基準や治療法までは習熟していない)」クチでした。

そこで泥縄的にこの病気の勉強をしていたところだったので,ノートをとる代わりにこのブログに線維筋痛症の疾患概念や治療法をまとめていきたいと思います。


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