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パキシルの,メジャーでマイナーな副作用 (2)

抗うつ薬の副作用としての性機能障害が起こる頻度は,ある研究によれば約24%とされています。

この研究をまとめたウェブページがありますので,そのリンクをお示ししておきます。
「新規抗うつ薬使用患者における性機能障害の発現率」(Clayton AH,他)

話がややこしくなりますが,上記のページは「エビデンスレビュー 新規抗うつ薬使用患者の性機能障害の発現をどうとらえるか―」というページからのリンクです。
さらに,このページの元リンクをたどると「パキシル情報サイト Paxil.jp」というサイトにたどり着きます。これは,パキシルの販売元であるグラクソ・スミスクライン株式会社(GSK)が運営するウェブサイトです。

脱線を承知で説明するならば,「新規抗うつ薬使用患者における性機能障害の発現率」のレビューを自社のサイトに乗せたGSKの意図は,パキシルの副作用としての性機能障害への注意を喚起することではありません。
彼らが言いたいのは「エビデンスレビュー 新規抗うつ薬使用患者の性機能障害の発現をどうとらえるか―」の見出しにもなっている「SSRI間で有意差なし」でしょう。

パキシルによる性機能障害が業界で注目を集めた時期があって,これはその火消しのための対応といったところでしょうか。
外資系の製薬会社はこういうやり方がお好きなようで,ジプレキサのイーライリリー社も体重増加や血糖・脂質の上昇といった代謝系副作用が問題になったときに,「ジプレキサだけでなく非定型抗精神病薬全体の問題である」とか,「統合失調症患者ではそもそも糖尿病リスクが高い」といったキャンペーンを張っていたような記憶があります。

ただ,個人的にはこういった,「悪いのは俺だけじゃない」式の開き直り的対応は好きではありません。
薬に副作用があること自体は不可避なのですから,製薬会社は,他社の製品はさておいて,自社製品が適正に使用されるよう心を砕くべきなのではないでしょうか。

私も,性機能障害がパキシル固有の問題だとは思いませんが,使用頻度が高いために性機能障害を含む副作用に遭遇する機会が多いのは確かです。
売れる薬を製造・販売している会社は,相応の責任が生じると心得るべきでしょう。

GSKの場合,他のSSRIとパキシルとの間で性機能障害に関するリスクが同等であることを主張する根拠にClaytonらの研究結果を利用するのであれば,パキシルの添付文書においてもこの研究で示された24%という数字を採用して,処方医の注意を喚起すべきです。

しかしながら実際にはGSKは添付文書では,治験のデータに基づいてパキシルによる性機能障害の頻度は1%未満であると謳っています。

これでは,ダブルスダンダードだと批判されても仕方がありません。

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コメント (1)

匿名:

私は鬱病になり14年になります。何度も入院しましたし、この夏も又入院します。私、鬱病だけど統合失調症の人が飲む要の薬も飲んでいます。幻聴や幻覚があるからです。
今は薬のお陰で止まっていますが飲むのを辞めると又出てきそうです。

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2007年05月21日 11:31に投稿されたエントリーのページです。

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