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パキシルの,メジャーでマイナーな副作用 (3)

実は,パキシルを含むセロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)によって性機能障害が生じる確率は24%どころではないという報告もあります。

Journal of Clinical Psychiatryという雑誌の62巻(2001年)に掲載されているMontejoらの研究によると,パキシルで70%,ジェイゾロフトで62.9%,ルボックスで62.3%の確率で性機能障害を生じさせることが示されています。

パキシルで治療した患者さんの7割に性機能障害が生じているというのは,日本人精神科医の感覚からすればやや突飛な話のようにさえ思われます。
しかし,「SSRIで多くの患者さんに性機能障害が起こる」というのは,どうやら欧米では常識となっている事実のようです(欧米ではパキシルの添付文書にその旨が記されています)。

日本人だけがこの副作用に特別抵抗力があるということはなさそうなので,わが国においてこの副作用が看過されているのは,日本人の国民性や精神科医の側の怠慢,そして製薬会社の確信犯的な情報隠しの結果であると考えるべきでしょう。

治療を自己中断してしまう患者さんは一定数いますが,そういった患者さんの何割かは,性機能障害を苦にして服薬コンプライアンスが悪化しているのかもしれません。

うつ病では,治療中断が最悪の場合は自殺に繋がります。
病気の症状を取り除くだけではなく,患者さんのQOLを向上させることがこれからの精神医学の目標になっていくとも言われています。

そうしたことを考え合わせると,副作用に関するインフォームド・コンセントや,副作用が起こった場合の対処に関して,われわれ精神科医はもっと敏感になるべきでしょう。

パキシルと性機能障害の問題は,そうしたことを考える端緒となるような気がします。

(この項終わり)

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コメント (1)

とおりすがり:

私もパキシルが原因と思われる性機能障害を経験しました。記憶では、20mg の服用を約1年続けた後、30mg に増えたところで射精不能となったようです。服用の中断後すぐに回復しましたのでこれが原因ではないかと疑いました。これではパキシルを服用し続ける限り不妊となってしまうのではないかと。

医師から行われた副作用に関する説明は眠気のみだったと思います。

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2007年05月27日 21:37に投稿されたエントリーのページです。

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