日本の臨床精神薬理学の問題点のひとつとして,ベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬(デパスやアモバンのような,非ベンゾジアゼピン系と謳われてはいても,作用機序が結局ベンゾジアゼピンと同じであるものも含めます)の高用量・慢性投与が挙げられることは以前に「精神科の薬はクセになるか?」でも述べたとおりです。
ここではこの問題の先達であるアメリカにおいて,この問題がどのようにして起こり,解決されていったのかを学んでみようと思います。
主な参考文献はデイヴィッド ヒーリーの「抗うつ薬の功罪―SSRI論争と訴訟」。
既に一部では有名すぎるほど有名な良書です。
副題の通り,本書では医療と製薬業界の関係について,SSRIにまつわる風説と真実を軸に描き出していますが,実はベンゾジアゼピンの盛衰についてもかなりの紙幅が割かれています。
薬物療法に関しては(も)アメリカに周回遅れのわが国では,彼らにとっては過去の問題であるこの部分がむしろ役に立つかもしれません(何しろこの本に出てくるSSRIのほとんどが日本ではまだ未認可ですし)。
この本を参考に,他の知見や私見を交えて,わが国におけるベンゾジアゼピン系薬物の用いられ方の常識と非常識を述べていきたいと思います。
ベンゾジアゼピンの隆盛と没落 (2)
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