CATIE試験の結果をもって,日本イーライリリー社がジプレキサ(オランザピン)の有用性を主張することには,少なくとも以下の2つの問題があります。
- CATIE試験の試験期間は18ヶ月だが,対象となった統合失調症は慢性疾患であって,患者さんは生涯に渡って服薬を続ける必要がある。
- CATIE試験は米国の試験であり,対象となった患者さんはすべてアメリカ人である
まず1.ですが,たった1年半の試験期間においても,ジプレキサによってもたらされる体重増加や血糖上昇,脂質上昇といった副作用の頻度が高いことは明らかにされているわけです。
この薬を,20年,30年と飲み続けた患者さんの体には何が起こるのでしょう?
誰にもわかりません。
米国ですらジプレキサが発売されたのは1996年です。つまり11年を超えてこの薬を飲み続けた患者さんは世界中を見回しても存在しないのです。
一方で,内分泌・代謝内科の分野の研究では,年余に渡る血糖や脂質の上昇が確実に寿命を縮めることを明らかにしています。
空腹時血糖が126mg/dlを超えると「糖尿病型」の血糖値とみなされますが,そこまで至らなくても,正常域内で血糖が上昇するだけで将来の心血管系の疾患(脳卒中や心筋梗塞)の発症リスクが飛躍的に高まることが知られているのです。
ジプレキサを服用している患者さんの空腹時血糖値が80mg/dlから100mg/dlに上昇したとします。
正常値なので,主治医がこれを理由にジプレキサを中止する可能性は低いでしょう。
しかし,空腹時血糖値が80mg/dlのまま20年を経過した場合と,100mg/dlで経過した場合とでは,20年後,30年後のの患者さんの健康度はまったく違ったものになっている可能性が大なのです。
>>>ジプレキサと体重増加・糖尿病 (5)