« 2008年01月 | メイン | 2008年03月 »

2008年02月 アーカイブ

2008年02月10日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (16)

応援クリックよろしくお願いしますメンタルヘルスブログランキング 現在44位↓↓

次に睡眠薬と安定剤のどちらから減量を開始するか,ですが,これもケース・バイ・ケースです。
私ならば,この患者さんの処方を一見して,安定剤の減量から開始します。

ぐだぐださんからもご質問をいただきましたが,そもそも,ベンゾジアゼピン系薬物というカテゴリーの中では,睡眠薬と安定剤の区別は恣意的なものに過ぎません……でした。
以前にも書きましたが,ベンゾジアゼピン系薬物はGABA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に働きかけてその作用を発揮します。
この,同じような化学構造と作用機序を有したいくつもの物質の中で,なぜか抗不安作用が強いものと催眠鎮静作用が強いものとがあり,前者を便宜的に精神安定剤,後者を睡眠薬と呼称してきたわけです。

最近になって,ベンゾジアゼピン結合部位に少なくとも2つの種類があることがわかってきました。
これらのサブタイプは,1つはω(オメガ)1受容体,もう1つはω2受容体と呼ばれています。
ω1受容体とω2受容体は脳内分布も,機能も異なっています。
ω1受容体は催眠鎮静作用に,ω2受容体は抗不安作用に関連しています。

従来のベンゾジアゼピン系薬物はベンゾジアゼピン結合部位のサブタイプに対する選択性がありませんが,それでもω1受容体に結合しやすいものと,ω2受容体に結合しやすいものとがあります。
ベンゾジアゼピン系薬物の中で「なぜか抗不安作用が強いものと催眠鎮静作用が強いものとがあ」ると書きましたが,その「なぜか」が,このω1/ω2受容体への結合バランスだったわけです。

>>>睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (17)


>>>「メンタルクリニック.net」トップページへ



2008年02月17日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (17)

応援クリックよろしくお願いしますメンタルヘルスブログランキング 現在56位↓↓

つまり,ベンゾジアゼピン系薬物の中で,ω1受容体に強く作用するものが睡眠薬,ω2受容体に強く作用するものが抗不安薬安定剤であると言うことができます。

ぐだぐださんからのコメントの中でまた,「遥かに強いとされているベゲタミン等の方がまだましと思えて」しまう,というくだりがありますが,これに関しては私も部分的には賛成です。

ω1受容体に作用する睡眠薬にもω2受容体に作用する抗不安薬にも依存性があります。
しかし人間の脳内の複雑な神経ネットワークの中で,ベンゾジアゼピン結合部位(ω1受容体とω2受容体)だけが催眠や抗不安作用の発現に関与しているわけではありません。

ω1受容体もω2受容体も介さずに催眠作用や抗不安作用を発揮する,依存性が無い薬物があるのであれば最初からそれを使えばいいわけです。

そういった薬があればベンゾジアゼピンから離脱する――睡眠薬と安定剤を止めるためにも有用です。
実際,私はそういった薬を要所要所で使います。

しかしその「そういった薬」にベゲタミンは含まれません。
ベゲタミンにはA錠とB錠があって,どちらもクロルプロマジンと塩酸プロメタジン,フェノバルビタールの合剤なのですが(AとBでは配合比が異なるだけです),このフェノバルビタールが曲者なのです。

フェノバルビタールはバルビツール系と一括りにされる睡眠・安定剤のひとつです。
かつて全盛を極めていた頃には,バルビツール系薬物は臨床の場で頻用,もしくは乱用
されていました。
ちょうど現在のベンゾジアゼピン系薬物のように。

>>>睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (18)


>>>「メンタルクリニック.net」トップページへ


About 2008年02月

2008年02月にブログ「メンタルクリニック.net」に投稿されたすべてのエントリーです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

前のアーカイブは2008年01月です。

次のアーカイブは2008年03月です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。