睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (16)
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次に睡眠薬と安定剤のどちらから減量を開始するか,ですが,これもケース・バイ・ケースです。
私ならば,この患者さんの処方を一見して,安定剤の減量から開始します。
ぐだぐださんからもご質問をいただきましたが,そもそも,ベンゾジアゼピン系薬物というカテゴリーの中では,睡眠薬と安定剤の区別は恣意的なものに過ぎません……でした。
以前にも書きましたが,ベンゾジアゼピン系薬物はGABA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に働きかけてその作用を発揮します。
この,同じような化学構造と作用機序を有したいくつもの物質の中で,なぜか抗不安作用が強いものと催眠鎮静作用が強いものとがあり,前者を便宜的に精神安定剤,後者を睡眠薬と呼称してきたわけです。
最近になって,ベンゾジアゼピン結合部位に少なくとも2つの種類があることがわかってきました。
これらのサブタイプは,1つはω(オメガ)1受容体,もう1つはω2受容体と呼ばれています。
ω1受容体とω2受容体は脳内分布も,機能も異なっています。
ω1受容体は催眠鎮静作用に,ω2受容体は抗不安作用に関連しています。
従来のベンゾジアゼピン系薬物はベンゾジアゼピン結合部位のサブタイプに対する選択性がありませんが,それでもω1受容体に結合しやすいものと,ω2受容体に結合しやすいものとがあります。
ベンゾジアゼピン系薬物の中で「なぜか抗不安作用が強いものと催眠鎮静作用が強いものとがあ」ると書きましたが,その「なぜか」が,このω1/ω2受容体への結合バランスだったわけです。