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双極性障害(躁うつ病)の診断と治療 ―典型的な治療失敗例(疑)を通じて― (13)

躁うつ病_躁鬱病_双極性障害_気分障害_診断_治療

奇しくもこの主治医自身が言っている通り,双極性障害(躁鬱病,躁うつ病)と境界性人格障害(ボーダーライン・パーソナリティ・ディスオーダー)の鑑別はしばしば困難で,横断像だけからでは判断できないことも少なくありません。
そして適切な治療がなされずに慢性化してしまった双極性障害の病像は,多くの場合で人格障害のように見えてしまいます。

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たなか氏の場合も,10代後半で発症した双極性障害としても説明がつきそうな気もするのですが……。

 
加えて,この主治医はたなか氏に対して境界性人格障害を標的とした精神療法を施していますが,これもどうかと思われます。

双極性障害と境界性人格障害の併存という診断が正しかったとしても,前者がコントロールされない状態で後者への治療を先行するのは,患者さんにとって非常に辛いであろうと思われるやり方だからです。


糖尿病患者さんが風邪をひき,それに対する適切な治療を行えずにこじらせてしまい,肺炎を起こしてしまったのに,糖尿病に有効だからという理由で運動療法を課しているようなものです。

たなか氏の予後は大いに懸念されるところですが,これは広くわが国で不適切な治療を受けているすべての双極性障害の患者さんにも言えることです。

願わくは,正しい治療法や,それを行える精神科医についての情報が広く知れ渡るような制度が整備されますように。

拙記事が,いくらかなりとも皆さんのお役に立ったならば幸いです。

(この項終わり)


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コメント (1)

なやみ虫:

初めてコメントします。双極性障害のブログを拝読し、とても救われました。
私の主人が今は双極性障害と診断されていますが、この失敗症例と同じ経緯をたどりました。
突然休職した当初はうつ状態、うつ病と診断されました。本人の希望で転院後、SSRI等が処方された約2週間後から、周りの人の親切を「俺の人徳がなせる技」と発言したり、外泊が増えたり、そのうち海外旅行や散財等がエスカレートしたり、その他彼の認知に違和感を感じた私が病院に連絡し、双極性障害・適応障害に診断が変わりました。ただ、主人や主人の両親と考えが合わず(彼や両親は、鬱病だと思っており、休めば治る、ゆっくり休んでね等と発言できない私は病気に対する理解がないと叱責されました)「勝手に病院に連絡して病名を変えた」と言われ、その後2回転院し、私は離婚を要求され、現在調停中です。
現在の医師に、彼の、今でも数百万の買い物をする、離婚したくて仕方ない様子を伝えると、「患者の訴えをよくするのが治療。患者からは、復職に対する訴えしかないため、なんともできない。また、彼の様子は守秘義務があるので詳しく話せない」とのことでした。現在はドグマチールを一日100㎎服用しています。
私自身が当事者のため、客観的な状況把握に自信がありませんが、ただただ自分の無力さを責めていました。初めて病院に連絡したのが、休職から半年後だったので、もっと早く違和感に気付けてたらとか、彼が自分で病院を調べて、転々とするのを止めたほうがよかったのだろうかとか、病院への連絡も、もっと良いやり方があったのではないかとか。そんな中でこのブログを拝見し、診断に10年かかるとか、適切に治療できる医師は25%とか読み、それならば、この状況は仕方がなかったのかもしれないと、自分勝手ながら気持ちが整理できました。
自分なりに調べても、好きなことはできるけど、いやなことはできないという鬱に、非定形、新型、ディスチミア等複数ヒットしてしまうし、双極性障害と人格障害の区別が難しい等、素人には調べるほど診断も治療も複雑で、混乱しました。私の主観では、主人は逃避型うつ、という症状に特に当てはまっているように感じましたが、その逃避型うつという言葉が、医学的な病名かもわからなかったですし、結局は先生が双極性障害とおっしゃるなら、そうなんだろうと納得するしかできないのが現状でした。
今後、家族や本人が困りはてても、精神科にいけば、ひとまず安心、というような時代が来てほしいと思いました。

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2008年11月04日 16:42に投稿されたエントリーのページです。

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