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国内外における睡眠薬・安定剤の処方傾向の違いに想う

JustAnswerで精神科臨床関係の相談に回答していますが、ネットという特性もあって、海外在住の日本人の方々からのご質問が少なくありません。

やはり言葉が通じない、もしくは母国語ほどに細かいニュアンスを伝えられない環境では、精神科受診はハードルが高いようです。
また、GP(general practitioner)を受診してから、紹介を受けて数ヶ月してようやく専門医の診察を受けられる、といった医療制度がとられている国もあります。
たしかに、そういった状況にいる方々にとっては、文字のやり取りであっても日本語で精神科的問題を相談できるシステムというのは有用なのだろうと思われ、すこしでもお役に立てるよう、日々心を砕いています。

そんな中で痛感させられることの違いのひとつがやはり睡眠薬、安定剤(ベンゾジアゼピン系薬物)の使用実態の違い。

恐らくほとんどの先進諸国ではunderuse(使われなさすぎ)。
SSRIを服用してactivation syndromeを起こして不眠と不安を呈していても眠剤も安定剤も出してもらえないのだがどうしたらよいか、という相談を受けたりします。
だからSSRI服用に伴う自殺が取り沙汰されたりするのだろうな、と思ったりもしつつ、GPに1週間ぶんくらいは眠剤の処方を希望できないのかと逆質問すると、やはり駄目なのだそうで。
Activationは1~2週間で治まるから待つように、と言われるそうです。
それくらいベンゾジアゼピンの使用は徹底して制限されているようです。

一方で国内からの質問は一定数が、「もう何ヶ月(時には何年)も薬を飲み続けているが良くならない。病院を変えた方がいいだろうか」という質問。
良くならないのになぜ何ヶ月も通っていられるのですか? とこちらから訊くことはありませんが、処方を確認すると案の定というか、皆さん、ベンゾジアゼンピン漬け。
2剤3剤併用は当たり前で、高用量を月単位・年単位で服用されている方がごろごろ。症状が良くなろうが悪くなろうがお構いなしに継続されている例が大半です。
日本では間違いなくoveruse(使いすぎ)。

どちらも正しくないのだろうな、とは思いますが……。


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2011年11月11日 22:29に投稿されたエントリーのページです。

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