一般論で申し上げれば、うつ病には「治癒」という概念はありません。
もう薬を飲まなくても絶対に再発する可能性は無い、という状態にはならないということです。
近年うつ病は、高い確率で再発する反復性・慢性の疾患として捉えられるようになってきています。
ただずっとうつ状態ということを意味するわけではなく、「寛解」と「回復」という概念があり、この回復をいかに保つかが慢性期のうつ病治療、すなわち維持療法の肝となります。
この有名な図をご覧ください。
http://www.e556e556.com/qa/depression_remission.gif
うつ病の急性期に抗うつ薬治療を行うと、半数の患者様は3ヶ月以内に「寛解」(うつ症状がない状態)に至ります。
ただ、ここで喜んで治療をやめてしまう高い確率で「再燃」します。
このため寛解後3~9ヶ月間は抗うつ剤の量を減らさずに維持療法を行います。その間に症状が現れなければ「回復」とみなされます。
多くの研究では回復後も維持療法を続けることで再発率が下がり続けることが示されています。
ただ、臨床的には、多くの場合、回復まで至れば薬の中止を考えてよいでしょう。それでも、順調に進んだ場合であっても1年間は抗うつ薬を飲むことになります。
ここまでが一般論です。
これをいかに患者様に個別化して、どのように薬物療法の中断と二次的に生じた問題の解決を行っていくかが、精神科医の腕の見せどころ、ということになるでしょうか。