精神科医の側がうつ病の治療をいつ止めるか、という出口戦略をもっていないところにきて、近年、話を複雑なものにしているのが「うつは心の風邪」キャンペーンでしょう。
ざっと調べた所では、これはどうやら1999年に、デプロメール(=ルボックス)を売り始める際、明治製菓がひねくりだしたキャッチフレーズのようです。
このキャンペーンによりうつ病の患者様が精神科/心療内科を受診しやすくなった(そして抗うつ薬の売り上げも伸びた)という「功」が強調されることが少なくありませんが、「罪」の方が大きいだろうというのが私の個人的意見です。
患者様に、「うつ病とは一過性の病気で、短い期間だけ薬を飲んで休んでいれば治る病気である」というイメージを持たせてしまったように思うからです。
精神科医の大半は薬をだらだらと出し続けるつもりでおり、患者様は薬を飲めばうつ病はすぐに良くなり元通りの生活が出来ると思っている――単純化すれば、「うつは心の風邪」キャンペーン以降、そういった構図が精神科臨床の現場に出来上がってしまいました。
そのどちらの考え方も間違っています。
うつ病は再燃・再発のリスクが高い慢性疾患であって、「風邪」のような一過性の病態からは程遠いものです。
しかし一方で、だからといって漫然と薬を出し続けていいというものでもありません。
医師を正しく教育し、患者様を正しく啓蒙する必要が、日本のうつ病の臨床にはあるように思われます。