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精神科と神経科と神経内科と心療内科 (5)

このブログを書くにあたって用いる資料はできるだけ皆さんが確認可能で、かつ確度が高いものを用いようと思っています。私が自分では当然のように思っている知識も、基本的には出典を探してお示しするようにしているのですが……

という書き出しにしたのは、今回のテーマである精神科と神経科の区別に関して、このような用語の分裂が生まれるにいたった歴史的展望を記した資料がないかと探していて、結局みつからなかったからです。
実は「精神科と神経科と神経内科と心療内科」の中では精神科と神経科の区別はいちばん簡単なところで、回答を先に述べてしまえば「区別は無い。精神科=神経科である」ということになります。

いろいろ調べてみたところでは例えば、厚生労働省のサイトの何階層目かに置いてある「日米の診療科別の医師数の比較(1)」という資料。
ここでは日本の精神科医数が15,460人、それに対応する米国のPsychiatry & Neurologyに従事する医師数が45,444人……と表記されていますが、この表の脚注によると「精神科は、神経科、神経内科を含む」とされています。
これをもって精神科=神経科の根拠としたいところですが、なぜか神経内科まで合算されているので使いづらい資料になっています。

脇道に逸れますが、日本病理学会・社会保険小委員会が厚労省のこの資料をもとに、人口補正を行った日米の診療科別医師数比を算出していて、それによると日本の人口比当たりの精神科医数はアメリカの0.86倍ということになるようです。
病床数の圧倒的な違いや、わが国の悪名高い「精神科特例」(←ご存知ですか?)といった要素を考えると、実質的な差はこの程度には留まらなくなるのでしょうが……

公資料以外のものを当たると様々な定義・主張が見られます。

池下やすらぎクリニックのサイトでは精神科と神経科の違いについて、
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「精神科」は躁うつ病、神経症(ノイローゼ)、精神分裂病などを代表とする病気について人間の心理面、精神面(思考、感情)、行動面での異常を人間関係や社会との関連から理解し、治療していこうとします。

「神経科」は精神科領域の病気を脳の構造の変化と心理的変化との密接な関係があることを念頭において理解し、神経系の活動と精神病との関係の観点から、さまざまな診断検査を通して、脳をより生理学的、化学的にみていこうとする傾向があります。
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と述べられています。
精神科では精神疾患を「心の病」として扱い、神経科では「脳の病気」として扱う、という定義のようですが、やや牽強付会かと思われます。


>>精神科と神経科と神経内科と心療内科 (6)
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コメント (2)

実は、パニック障害と病名がつくまでに半年以上も掛かりました。
その間に何軒もの病院を受診しました。それでも病名は出なくて、辛い日々でした。まだ心療内科も知らず、病院事態も近くにはなかったので大変でした。
私たちには、精神科、神経科、神経内科、心療内科の区別は分からない人のほうが多いと思います。
偶然、猫山先生に出逢えて色々と教えて頂いて、勉強になります。
これからも、宜しくお願いします。

琳瑚さん:
コメントありがとうございました。過分なご評価をいただきまして恐縮です。
そうですね。患者さんが正しい科にたどり着いて,正しく診断されて,正しい治療が開始されるまでにかかる時間があまりにも長すぎるような気がします。
なのでこのブログを始めるにあたって,まず,そもそたのでもどういう症状でどの科を受診したらよいか,という,初歩の初歩から始めてみることにしました。
残念ながら,まだ日本の精神科領域においては,当たり前のことが当たり前ではないんですよね。

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2006年11月11日 06:21に投稿されたエントリーのページです。

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