« 精神科の薬と緑内障 (2) | メイン | ベンゾジアゼピンの隆盛と没落 (3) »

精神科の薬と緑内障 (3)

そこで今回,もっともよく使用されている眠剤のひとつ,ロヒプノールの販売元である中外製薬(例のタミフルの販売元でもあります)のウェブサイトから,以下のような質問を送付してみました。

「医薬情報センター御中:
御社製品ロヒプノールについてですが,急性狭隅角緑内障を併存している患者さんには投与が禁忌となっています。確かに,抗コリン作用がある薬物の場合は緑内障を患われている方への投与は危険だと思いますが,ベンゾジアゼピン系薬物であるロヒプノールは何故に眼圧上昇のリスクがあるのでしょうか? ロヒプノールにも抗コリン作用があるのでしょうか? それとも他の機序によって眼圧が上昇しうるのでしょうか? またこの急性狭隅角緑内障の『急性』はどのように定義されるのでしょうか?」

これに対してご丁寧な回答をいただきました。

「この度は弊社ホームページよりお問合せをいただき、ありがとうございます。
お問合せにつきまして、下記のとおりご回答させていただきます。
ベンゾジアゼピン系薬剤は弱い抗コリン作用を有するため,眼圧が上昇するおそれがあるので,
禁忌としています。また,急性型については,緑内障診療ガイドラインでは『隅角の広範な閉塞に
より短時間に眼圧が上昇し,いわゆる緑内障発作に代表される臨床症状を呈するもの』とされて
います。
よろしくお願い申し上げます。

中外製薬(株)医薬情報センター」

というわけで,不勉強でしたがロヒプノールにも(おそらく他のベンゾジアゼピン系薬物も同様であろうと思われます)弱いながら抗コリン作用があるために急性狭隅角緑内障を併存している患者さんには投与が禁忌とされているようです。

不眠や不安を呈する精神科疾患も緑内障も有病率が高い疾患なので,両者を合併する患者さんの数は決して少なくありません。
もちろん「急性」狭隅角緑内障の定義にあてはまる患者さんは多くはないのでしょうが,眼圧が安定している患者さんの場合では,眼科と連携して精神科治療を行っていく必要がありそうです。

(この項終わり)


追伸 蛇足ながら,私がジェネリック医薬品の使用に積極的ではない理由の一つは,安全性情報に関する提供能力が,多くのジェネリック医薬品メーカーで貧弱であることです。
多くの先行薬メーカーが今回の中外のように情報センターをもっていて迅速に対応してくれますが,このような体制をとっているジェネリックメーカーは多くはありません。

メンタルヘルスブログランキング 現在41位……。応援いただけますと幸いです


>>>「メンタルクリニック.net」トップページへ




コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

About

2007年08月19日 11:32に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「精神科の薬と緑内障 (2)」です。

次の投稿は「ベンゾジアゼピンの隆盛と没落 (3)」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。