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2007年07月 アーカイブ

2007年07月12日

ベンゾジアゼピンの隆盛と没落 (1)

日本の臨床精神薬理学の問題点のひとつとして,ベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬(デパスやアモバンのような,非ベンゾジアゼピン系と謳われてはいても,作用機序が結局ベンゾジアゼピンと同じであるものも含めます)の高用量・慢性投与が挙げられることは以前に「精神科の薬はクセになるか?」でも述べたとおりです。

ここではこの問題の先達であるアメリカにおいて,この問題がどのようにして起こり,解決されていったのかを学んでみようと思います。
主な参考文献はデイヴィッド ヒーリーの「抗うつ薬の功罪―SSRI論争と訴訟」
既に一部では有名すぎるほど有名な良書です。
副題の通り,本書では医療と製薬業界の関係について,SSRIにまつわる風説と真実を軸に描き出していますが,実はベンゾジアゼピンの盛衰についてもかなりの紙幅が割かれています。

薬物療法に関しては(も)アメリカに周回遅れのわが国では,彼らにとっては過去の問題であるこの部分がむしろ役に立つかもしれません(何しろこの本に出てくるSSRIのほとんどが日本ではまだ未認可ですし)。

この本を参考に,他の知見や私見を交えて,わが国におけるベンゾジアゼピン系薬物の用いられ方の常識と非常識を述べていきたいと思います。

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ベンゾジアゼピンの隆盛と没落 (2)
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2007年07月16日

ベンゾジアゼピンの隆盛と没落 (2)

歴史の表舞台にベンゾジアゼピンが登場したのは1960年代前半のことでした。
スイスのロシュ社(例のタミフルを製造していた会社でもあります)がクロロジアゼポキシド(リブリウム)とジアゼパム(ヴァリウム)を相次いで上市し,商業的な成功を収めたのです。

ちなみにこの2つの物質を発見したのはポーランド系ユダヤ人であるレオ・スターンバック。彼の研究は,ロシュ社が世界的な製薬企業に躍進することに大きく貢献しました。

ロシュ社のプロモーションもあって,リブリウムとヴァリウムは,まず身体疾患をもつ患者の「心因」に対して処方されました。
たとえば胃潰瘍,たとえば高血圧,たとえば喘息,頭痛。
たしかにこれらの疾患は多要因性であり,症状の発現や変動に心因が少なからず関係します。
しかしもちろん根治治療からはほど遠い薬物療法ですが,医師たちは本来の治療薬に加えてヴァリウムを広く処方する用になりました。

そしてさらに,医師たちは処方対象を健康な人々にも拡大していったのです。

[参考資料]
「抗うつ薬の功罪―SSRI論争と訴訟」,デイヴィッド ヒーリー,みすず書房 (2005/08)
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』:レオ・スターンバック

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>>>ベンゾジアゼピンの隆盛と没落 (3)
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