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セカンドオピニオン アーカイブ

2009年08月16日

精神科薬物療法に対する猫山司のスタンス

またまたお久しぶりになってしまいました。
皆さんはいかがお過ごしでしょうか。私は携帯電話を肌身離さず所持しつつのお盆休み中です。

さて、最近、拙ブログのコメント欄でセカンドオピニオンを求められることが多くなってきたように感じています。
また、その内容に一定の傾向があるように思われるため、今後の無用な混乱を避けるために、精神科薬物療法に関する私のスタンスをここで改めて表明しておくことにします。

というのも、最近寄せられるご質問やご相談に、「薬をやめたいのだがどうしたらよいか」という趣旨のものが目立つように感じられるからです。
これまで私が拙ブログでベンゾジアゼピン系薬物や抗うつ薬の副作用や離脱症状について言及してきたからなのかもしれませんが、では私が実臨床でこれらの薬物を使用しないのかと言えばそんなことはありません。

むしろ私は、向精神薬を積極的に治療に用いるタイプの精神科医であると自認しています。
副作用が無い薬など存在しませんから、薬を使用することのメリットとデメリットのバランスを常に念頭に置いて置かなければなりませんが、少なくとも初期・急性期の治療における向精神薬の有用性に私は一片の疑いももっていません(将来的にはもっと有効で安全な治療法が現れる可能性は否定しませんが)。

ただ、薬剤の選択や使用量、使用期間について精神科医はもっと敏感になるべきであるというのが私の持論であり、拙ブログで表明してきた主張であるつもりです。

したがって、拙ブログに寄せられたご質問に対する回答も、「薬をいかにやめるか」ではなく、「薬の使用をいかに最適化していくか」という視点でお示ししていくことになると思います(薬の最適使用の中に「薬の中止」という選択肢も含まれます)。
時間の許す限りご質問にはお答えしていく所存ですが、この点はあらかじめご了承いただきたく、本エントリーを執筆することとしました。

今後とも何卒よろしくお願いいたします。


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2009年10月22日

二階堂さんへの回答

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今年の1月にいただいていたご相談なのですが……。
賞味期限切れを承知で、今年いただいたご質問には今年中に答えていきたいと思います。

結論から申し上げると、私には二階堂さんのご質問に対する明確な回答をお示しすることはできません。
担当医にとってもかなりタフな症例だと思います。
情報が限られていますので薬理学的な側面だけから検討しますが、

1) 抗うつ薬を飲むと強い頭痛と吐き気が現れる(診断はうつ病なのでしょうか?)
→セロトニン再取り込み阻害作用がある抗うつ薬(ほとんどの抗うつ薬が該当します)では嘔気と頭痛が現れることがあります。頭痛に関しては色々なタイプがあるので、抗うつ薬との関係は一概には申し上げられませんが(例えば、偏頭痛や群発頭痛にSSRIが有効とする知見があります)。

2) 昼と夕方に、テグレトール200ミリ(計400mg/日?)
→テグレトール(カルバマゼピン)は抗うつ薬としての適応はありませんが、構造的には三環系抗うつ薬と類似しているので、抗うつ薬の代替として使用されることが稀にあります(私は使用した経験がありませんし、カルバマゼピンがうつ病治療の主剤となりうるとは思えませんが)。
もし二階堂さんの診断が躁うつ病であるのであれば、気分安定薬として日本で適応がある3剤のうち、炭酸リチウムとバルプロ酸はともに吐き気の副作用があるので、消去法でカルバマゼピンが使用されたのかもしれません。
ちなみに、カルバマゼピンの血中濃度はいかほどなのでしょうか?

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2010年01月26日

さかきさんのご質問に対する回答①

さかきさんからのご相談に対する回答です。

さかきさんのご質問にお答えするためには、さかきさんがどのような診断に基づいてデパスを処方されたのかをまず知る必要があります。

他に精神医学的な疾患がなく、不眠だけが問題である場合であっても、その不眠に対して「概日リズム睡眠障害」のような診断が付くこともあります。
「なぜ眠れないのか」がわかれば、薬物療法以外の対応が可能かもしれません。

また、うつ病のような精神医学的基礎疾患があった上での不眠であるならば、原病がよくならないうちは、不眠だけが改善することは稀かもしれません。
この場合のうつ病と不眠は、風邪と咳のような関係にあるといえます。

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2010年03月31日

さかきさんのご質問に対する回答②

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さかきさんの不眠が精神医学的な基礎疾患を伴わないものであるという仮定でお話をします。

私がさかきさんの主治医であったとしたら、(最初からデパスを処方しないであろうと思いますが)、さかきさんがデパスを止めたいと希望されたら、ただちにデパスの処方を中止します。

代わりに何か他の薬を処方するということもしません。

そもそも薬物を必要とするような不眠であったかどうかが疑わしいところですし、1日量0.5mgのデパスを3ヶ月飲んだからといって依存が生じている可能性はきわめて低いからです。

薬を止めて、「しばらく様子を見てください」と告げて、2週間後くらいに来院していただくことになるでしょう。

ここからはさかきさん個人の問題ではなく、一般論として話を進めます。

上記のような対応をした場合、患者さんの反応はいくつかの典型的なパターンに分かれます。
「はい、わかりました」と納得される方は稀で、大多数の患者さんが、不満や不安を表出します。

それを撥ねつけて(私が実臨床でそれをやることはまずありませんが)帰宅させた場合、経験的には、半数の患者さんは2週間後に来院しません。

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さかきさんのご質問に対する回答➂:睡眠薬の精神依存

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「睡眠薬とりわけbenzodiazepine系睡眠薬は、精神科臨床のみならず一般科においても処方される頻度が最も高い向精神薬の1つである。睡眠薬の乱用・依存問題は、現在の薬物関連問題の中で突出してはいないものの、歴史と広がりをもっている。精神科臨床における睡眠薬関連症例は、薬物関連精神障害の10%程度を占め、抗不安薬等の併用率が高く,75%以上が依存症候群の診断を満たしている。睡眠薬の長期使用は、軽度とはいえない精神依存、身体依存をもたらし、比較的速やかに依存に至ることが示唆される」(尾崎茂、和田清.睡眠薬乱用・依存の実態と対策.臨床精神薬理 9巻10号

ここで述べられているのは、精神安定剤や睡眠薬といったベンゾジアゼピン系薬物に対する依存には、身体依存と精神依存とがあるということです。

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2010年05月25日

Natsuさんからのコメント

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Natsuさんから、非常に示唆に富むコメントをいただきました。

たしかに、「ベンゾジアゼピンの依存は,それが形成されたのと同じ期間をかけてようやく大過なく離脱までもっていくことができる」という私の記述には舌足らずのところがあり、多くの患者さんに不安を抱かせてしまったかもしれません。
なにしろ、現在の日本の精神科医療の現場では、10年以上に渡って漫然と向精神薬を処方されている患者さんはザラにおられるからです。

コメントをいただいたエントリーを書いたときは私は漠然と2~3年程度の期間ベンゾジアゼピンを服用していた患者さんで処方を中止する場合をイメージしていたのですが、それ以上の長期服用に至ってしまった患者さんへの対処についても触れておくべきでした。

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