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2007年12月 アーカイブ

2007年12月04日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (10)

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日本における1998年の抗不安薬(≒ベンゾジアゼピン系抗不安薬)の年間処方数は1億2千万件を超えています(文献1)。
「年間処方数」という言葉自体がぴんとこないかもしれませんが,要するに(赤ん坊から高齢者までひっくるめて)日本国民が年に1度はベンゾジアゼピンを処方されていると解釈すればよいでしょうか。

この数字は比較のために挙げました。
米国の抗不安薬(≒ベンゾジアゼピン系抗不安薬)の年間処方数は2千万件,英国では1千万件未満ですから,日本ではベンゾジアゼピンの処方件数は欧米各国の6~20倍にも及ぶことになります。
人口の違いによる調整を加えずとも,日本の処方件数が図抜けていることがおわかりになるでしょう。

しかもこれはあくまで「件数」であって,1件ごとの処方量は反映されていません。手元に数字はないのですが,1人の患者さんに1回に処方されるベンゾジアゼピンの用量もまた,日本は図抜けているのではないかと予想します。

英国でも米国でも,学会や規制当局が,ベンゾジアゼピンについては急性の不眠や不安に対する短期・頓服での使用を推奨し,長期使用を避ける指導がなされています。

日本ではようやく近年になってベンゾジアゼピンの依存の問題が少しずつ専門誌などで取り上げられるようになってきましたが,学会から実効性のあるガイドラインが発表されたり,厚生労働省から規制が加えられたりといった効き目のありそうな方策はまったくといってよいほど講じられていないのが現実です。

参考文献
1. 村崎光邦:わが国における向精神薬の現状と展望―21世紀を目指して―.臨床精神薬理 4:3-27,2001
2. 田島治:ベンゾジアゼピン系薬物の処方を再考する.臨床精神医学 30:1065-1069,2001

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2007年12月09日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (11)

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さて,前置きが長くなりましたが,今回から睡眠薬安定剤(≒ベンゾジアゼピン)の正しい止め方について述べていくことにします。
従来の,それも出来れば日本の論文を参考にした方法に,猫山自身の工夫を加えた私案だと思ってください。

この方法には,以下のような制限や留意点,注意点があります。

  1. 同じベンゾジアゼピンでも,安定剤と睡眠薬とで,止め方に違いがあります。
  2. 患者さん自身が,ベンゾジアゼピンを止めようという意思を持っていることが大前提です。
  3. 最適応は原病(うつ病や不安障害)が寛解しているにも関わらず依存が生じているために眠剤や安定剤が止められずにいる患者さん,もしくは精神疾患以外の疾患(腰痛など)に対してデパスなどが長期連用されたためにベンゾジアゼピン依存が生じてしまった患者さんです。
  4. 相対的な適応は,原病が寛解にまでは達していなくても,ベンゾジアゼピンの標的症状に対して代替療法がある患者さんです。
  5. そもそも,不安や不眠を完全に取り去ることと,ベンゾジアゼピンからの離脱は両立しません。つまりほとんどの患者さんでは「ある程度の症状はあるけれど,ベンゾジアゼピンは止められているか,頓用程度で済んでいる」という状態になるのが最終目標になります。
  6. 以前にも述べたように,あまりにも高用量,長期間のベンゾジアゼピン慢性投与を受けてきた患者さんは,そもそも離脱は不可能な場合が少なくありません。またこの場合の「高用量」や「長期期間」には個人差があり,一概に定義することはできません。
安定剤と睡眠薬とで異なる方法が用いられる必要がある理由は,第1には,安定剤では用いることができる「長時間作用型同効薬への置換」(デパス→メイラックスのような)という戦略がそのままでは用い難いこと(短時間型の眠剤を安易に長時間型の眠剤に置き換えれば,眠気のオーバーハング=日中への眠気の持ち越しが起こります),第2に反跳性の不安よりも反跳性の不眠に耐え続けることの方が難しく,また実害も出やすいこと,第3には依存性がより少ない代替薬が無いこと,が挙げられます。

というわけで,安定剤と睡眠薬に分けて,次回以降具体的な方法を述べていこうと思います。

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2007年12月19日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (12)

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例として,現在次のような処方を受けている患者さんがベンゾジアゼピンから離脱する(ベンゾジアゼピンを止める)場合を考えてみましょう。

  1. パキシル 40mg/1×夕食後
  2. デパス 3mg
    ソラナックス 1.2mg/3×食後
  3. ハルシオン 0.25mg
    ロヒプノール 2mg
    アローゼン 1g/1×就寝前

よく見かける処方ではないでしょうか。

しかし処方が同じだからといって,離脱法も同じというわけにはいきません。
ざっと思い浮かぶだけでも,以下の要素を考慮してベンゾジアゼピンの減量・中止を考えなければならないでしょう。

そもそも診断は?

年齢は? 性別は?

罹病期間は? 服薬期間は?

急性期? 慢性期?

改善している? 回復している? 寛解している?

最初からこの処方? 徐々に増えてきてこの処方内容で固定? それとも逆に,元々はもっとたくさんの薬を飲んでいたのを減量してこの処方になった?

そして……。
患者さん自身は減薬を望んでいるでしょうか? 服薬に対するご家族の理解度は?

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2007年12月20日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (13)

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不確定要素が多いと解が導き出せませんので,睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (13)で例示した処方を受けている患者さんのプロフィールは以下のようなものだということにしましょう。

[症例] 24歳,男性
[診断] パニック障害
[病歴] コンピューター関係の営業職。大学卒業後より現職。就職から1ヶ月ほどたった2年前の6月頃から営業先で特に誘因無くパニック発作が出現するようになった。仕事上のストレスは自覚していなかった。次第に発作頻度が増すようになったため,近医(心療内科)を受診。パニック障害の診断でデパス 3mg/3×食後を処方された。
その後発作頻度は劇的に減り,仕事は普通に行えていた。服薬開始2ヵ月後に自己断薬したところ,強い不安と不眠が出現した。心療内科で相談したところ,ソラナックス 1.2mg/3×食後とハルシオン 0.25mg/1×寝前が追加された。
仕事が忙しかったため,以後は診察を受けずに薬だけを受け取りに行っていた。断薬時に不調を呈した経験から服薬を怠ったことはなかった。1年前からハルシオンを飲んだけでは眠れないようになったため久しぶりに受診したところロヒプノール 2mg/1×寝前が追加された。
以後,パニック発作,不眠ともに認められず,自覚的には副作用も感じていなかったが,次第に薬の種類が増えていくことに不安を感じ,会社の産業医に相談したところ,専門医でセカンドオピニオンを受けることを勧められ,大学病院の精神科を受診した。
この精神科での担当医は#1. パニック障害(寛解状態),#2. ベンゾジアゼピン依存,の診断を付し,現在通っている心療内科の治療方針が望ましいものではないとの見解を示した。
患者はこの大学病院での治療と服用薬の減量・中止を希望した。
新主治医はまずデパスを中止した。しばらくは問題なく経過していたが,デパス中止1ヵ月後に,特に誘因なくパニック発作が出現したため,新主治医はパニック発作が完全寛解には至っていないと判断し,デパスを再開した上でパキシルを開始し,40mg/日まで増量した。
その後パニック発作は認められず,半年が経過している。新主治医はベンゾジアゼピンの減量を提案し,患者本人もそれに同意している。

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2007年12月26日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (14)

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さて,この患者さんは,ことほど然様にありがちな経緯で,現在4種類のベンゾジアゼピン系薬物を服用していることになります。

まず,目安として,ジアゼパム換算量を算出してみましょう。
慶大精神神経科臨床精神薬理研究班1999年版(出典:「向精神薬の等価換算」,星和書店)に基づけば……

デパス 3mg/日=ジアゼパム 10mg/日
ソラナックス 1.2mg/日=ジアゼパム 7.5mg/日
ハルシオン 0.25mg/日=ジアゼパム 5mg/日
ロヒプノール 2mg/日=ジアゼパム 10mg/日

よって,ジアゼパム総換算量は32.5mg/日です。
よくみかける処方ではありますが,改めて計算してみるとけっこうな量を飲んでいることになります。「睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (2)」で引用したHallstormらによる常用量依存の定義が「ジアゼパム 30mg/日以下,あるいは同等量の他のベンゾジアゼピンを継続的に使用し,断薬時に明らかな離脱症状が生じること」ですから,例示した患者さんは,Hallstormらが想定した「常用量」を超えた量のベンゾジアゼピンを年単位で飲み続けていることになります。

欧米で考案された定義やベンゾジアゼピン離脱法が日本でそのまま用いがたいのにはこのような背景があります。
日本における「常用量」は,欧米では往々にして「乱用量」と見做されるような用量×服薬期間になってしまうのです。

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2007年12月27日

患者さんが自分の紹介状(診療情報提供書)を読んでよいか? (1)

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いま進めている「睡眠薬と安定剤の正しい止め方」が終わるまでは寄り道しないつもりでいたのですが,鹿太郎さんからいただいたコメントが印象的で,色々と調べてみたところ,私としても意外な発見があったので記事にしてみることにしました。

患者さんが何らかの理由で転院する場合,前医が,次に受診する医療機関宛に紹介状(診療情報提供書)を作成することが少なくありません。
特定機能病院を受診する際,初診患者が紹介状を持っていないと特定療養費を請求されることがありますし,よりプラクティカルな視点から考えても,新主治医にしてみれば,紹介されてきた患者さんの病歴や薬歴がわかっていた方が治療はしやすいでしょう。

私個人としては,紹介状を作成することも受け取ることもありますが,基本的には患者さんが次の医療機関を受診する前に紹介状を開封して(鹿太郎さんの紹介状は封もされていなかったようですが)中身を読んでしまってもかまわないと思っていました……というか,今でも思っています。

もちろんこれはケース・バイ・ケースで,精神科に限らず,病名告知のような倫理的に複雑な問題が絡んでいるような場合には,診療情報提供書の内容を患者さんご自身に開示すべきではないと判断することもあります。
しかしそういった場合は,紹介状をご家族に託すか,紹介先に郵送すればよいだけのことです。
医療者側が,文書作成料を頂いたうえ,患者さんに,その患者さんご自身の病歴を記載した文書を運んでいただくという非常に図々しいやり方をとっているかぎり,それを患者さんに読むなというのはむしろ酷なような気もします。

読まれて困るようなことを書かないか,読んで患者さんが不愉快に感じたとしても(それが医学的な事実であって,かつ新主治医にとって有用な情報なので)敢えて記載するのだと割り切って,私は紹介状を書いています。

ところがざっと調べてみたかぎり,これはそれほど単純な問題ではないようです。

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2007年12月28日

患者さんが自分の紹介状(診療情報提供書)を読んでよいか? (2)

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今日はもう遅いので寝ますが,法律論やら医師会の「診療情報の提供に関する指針」やらに触れる前に,さらに寄り道をして,まず鹿太郎さんのコメントのご質問部分にお答えしておきます。

薄々おわかりかとは存じますが,傷病手当金請求書を書いてもらうためのマナーなんてありません。
文書料を払うわけですし,患者さんとしては当然の権利です。
医師の記載に過不足があり,かつそれが医学的に正しかったために傷病手当金が受け取れないことはありえますが,傷病手当金請求書を書くこと自体はまともな医者なら拒まないだろうと思います。

ただ,あくまで鹿太郎さんのコメントを読んだかぎりで判断させていただくのであれば――
その医者,まともじゃないですよね。

クリニックだということなのでその医者が一国一城の主なのでしょうし,理不尽を訴え出られる先があるわけではないので,その医者とやりとりをしても不毛です。病状にも障りかねません。

精神科医というのは(心療内科医も)変わった人が多いので,まともな医者を探すのは大変なのですが,もう少し相性が良い病院やクリニックはいくらでもあるような気がします。

別の医療機関を探すか,元の主治医に文書だけでも書いてもらえないか頼むのが(これも別にマナー違反ではありません)ベターではないかというのが私の個人的意見です。
ご参考になれば幸いです。

>>>患者さんが自分の紹介状(診療情報提供書)を読んでよいか? (3)


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患者さんが自分の紹介状(診療情報提供書)を読んでよいか? (3)

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さて,これまであまり気にしたことがなかった紹介状(診療情報提供書)の法的位置づけですが,どうやらこれは「信書」もしくは「私文書」ということになるようです(もし違っていたらご指摘下さい)。
一応ソースは「ほその司法書士事務所無料法律・登記相談」と「病院を転院する際の紹介状について - Yahoo!知恵袋」です。

これを単純に解釈すると,紹介先の医師に渡す前に,紹介元の医師が作成した診療情報提供書を患者さんが読んでしまうのはマナー違反どころか違法行為にもなりかねないということになります。

また,患者さんが紹介状を読むことによって紹介元――つまり紹介状を作成した側の医師とトラブルになることが精神科領域では稀ならずあります。
seisinka_sumoという精神科のドクターが,運営されている「精神科と大相撲といろいろ」というブログの「捨て台詞。」という記事で,典型的なエピソードを紹介なさっています。
依存症や人格障害圏の患者さんがらみではしばしばこうした問題が生じますし,やはり医者の側としても愉快な経験ではありません(かといって,こういった患者さんだからこそ正確な情報を紹介先に伝える必要があるので,いい加減な内容で済ますわけにもいきません)。

この文脈で考えると,鹿太郎さんに対して癇癪を起こしたドクターの「マナー違反だ」という主張の部分だけは間違ってはいないことになります。
もっとも,そこまでヒステリックな態度をとることは社会通念上問題があると思いますし,それを理由に診察を拒否したのは応召義務違反に当たりそうですが。

では絶対に患者さんは自分に関して書かれた紹介状の内容を知ることができないのかというと全然そんなことはなさそうだ,というところにこの問題の複雑さがあります。

>>>患者さんが自分の紹介状(診療情報提供書)を読んでよいか? (4)


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患者さんが自分の紹介状(診療情報提供書)を読んでよいか? (4)

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日本医師会が,「診療情報の提供に関する指針」というステートメントを発表しています。
これは主に医療機関から患者さんに診療記録(カルテなど)を開示する場合の指針なのですが,医師間で患者さんを紹介する場合の医師会のスタンスについても記述した部分があります。
長くなりますが,そのまま引用します。

「指針4-1関係

 この項は、日本医師会第IV次生命倫理懇談会報告の「4(2) 医師相互間の関係」の提案を明文化したものである。専門家と非専門家との協力、診療所と病院との連携、したがって、それに伴う転医が、病院と診療所相互間で、今後、益々盛んになることが予想される。また、患者が第二医の意見、第三医の意見を求めることを希望する場面も、今後、多くなるものと思われる。

 それらの中で、転医先あるいは紹介先の医師等が、その患者を以前に診療した、若しくは現在診療している医師に対して、診療上必要とされる診療情報等の提供を求める際に、備えるべき条件と手続きについて定めたのがこの指針である。周知のとおり、医師は自分が診療した患者、患者情報等について、守秘義務を負っている。したがって、患者本人以外の第三者に診療情報を提供する場合には、原則として本人の同意が必要である。この原則は、医師が他の医師に診療情報を提供する場合にも当てはまる。そこで、医師が他の医師に対して、診療上必要とされる診療情報の提供を求める場合には、患者本人の同意を得て行うべきであるとしたのが、a項である。これに対して、b項は提供を求められた医師に、同意の存在の確認を求めるとともに、各種検査記録、エックス線写真などを含めて、提供を求める医師が必要とする診療情報を提供すべきことを定めたものである。医師相互間の診療情報の提供に際しては、診療記録等の管理者としての責任を全うし、円滑な診療情報の交換を推進するため、できる限り、医師相互間で直接に、検査記録等の写しの受け渡しをすることが望ましい。

 指針〔4-1〕の精神は、他の医師へ患者を紹介する際の情報提供などについても参酌されるべきである。

小難しい文章ではありますが,太字部分を素直に読むと,紹介状を書く場合には,まず患者さんから,個人情報を第3者(紹介先の医師)に提供することへの同意を得なければならないことになります。

紹介状の詳細な内容に関しても患者さんの同意を得るべきかどうかはこの指針には書かれていませんが,何らかの事情で転院することになった患者さんに「紹介状を作成しますが,いいですか?」と確認して,「どんなことを書くんですか?」と聞き返されたら,ある程度の内容は明かさざるを得ないような気がします。

例えば人格障害や依存症の診断が付き,かつあまり筋の良ろしくない患者さんに「紹介状の内容が納得できるものでなければ作成に同意しない」と食い下がられたら,かなり苦慮しそうです(「では紹介状は書きません」と答えたら,そのことで患者さん側に生じる不利益への保障(端的には,特定療養費とか)を求められそうな気がしますし)。

実は私が(も)ごく稀に使う手ですが,患者さんに手渡す紹介状の内容は当たり障りのないものにして,詳細な情報は別途郵便やファックスで送ることがあります。
しかし医師会の指針を四角四面に解釈するならば,このやり方は守秘義務違反ということになるのでしょうか。

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2007年12月31日

患者さんが自分の紹介状(診療情報提供書)を読んでよいか? (5)

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しかし一方で,前記事で首記したように,日本医師会が発表した「診療情報の提供に関する指針」は医療機関から患者さんに診療記録を開示する場合の指針です。

詳細はリンクしたサイトをお読みいただくとして(苦行ですが),まず「3-3 診療記録等の開示による情報提供」に「医師および医療施設の管理者は、患者が自己の診療録、その他の診療記録等の閲覧、謄写を求めた場合には、原則としてこれに応ずるものとする」と記載されています。
つまり,医療機関側は,患者さんに求められれば診療記録等を患者さんにお見せしなければならないということです。

但し,要求されたらその場でただちに開示しなければならないというわけではありません。


3-5 診療記録等の開示を求める手続き
a 診療記録等の開示を求めようとする者は、各医療施設が定めた方式にしたがって、医療施設の管理者に対して申し立てる。

3-7 医療施設における手続き規定の整備
医療施設の管理者は、診療記録等の開示請求、実施、費用請求等に関する規定および申し立て書等の書式を整備する。


という記載から判断すると,医療機関側が,開示のための書類を用意し,患者さん側はそれに必要事項を記入して提出する形で診療記録等の開示が行われることになります。

ではさて,紹介状(診療情報提供書)は,この指針の文脈ではどのような扱いになるのでしょうか。

診療情報の提供に関する指針」には開示すべき「診療記録等」の定義も明示されていて,「診療録、手術記録、麻酔記録、各種検査記録、検査成績表、エックス線写真、助産録、看護記録、その他、診療の過程で患者の身体状況、病状等について作成、記録された書面、画像等の一切」となっています。
紹介状(診療情報提供書)については記載がありませんが,「診療の過程で患者の身体状況、病状等について作成、記録された書面」には含まれるような気がしますね。

実は医師会とは別に,厚生労働省でも類似の議論が行われていて,平成15年6月10日に発表されている「『診療に関する情報提供等の在り方に関する検討会』報告書」では,「『診療記録」とは、診療録、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、紹介状、退院した患者に係る入院期間中の診療経過の要約その他の診療の過程で患者の身体状況、病状、治療等について作成、記録又は保存された書類、画像等の記録をいう」と,紹介状は「診療記録」に含まれることが明確に定義されています。

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