精神科の薬はクセになるか? (3)
実際、日本におけるベンゾジアゼピン(系薬物)の処方件数や用量、いちど処方されたベンゾジアゼピンの継続期間は、欧米に比べるときわめて多く、高く、長いことが知られています。
ベンゾジアゼピンは、1950年代に登場した当初は、それ以前の同効薬とは異なり、安全係数が高く(≒大量服薬をしても死亡の危険が低い)、依存性が無い、夢の薬のようにみなされていました。
精神疾患の治療のためのみならず、健常な人々でさえも「生活の質を改善するために」――あたかも現代におけるSSRIのような用いられ方ですが――ベンゾジアゼピンを服用するようになり、ベンゾジアゼピンは一時代を築きます。
ベンゾジアゼピン黄金時代はしかし、米国においては1970年代に終焉を迎えました。
この系統の薬物が有する依存性が明らかになり、社会的なバッシングが起きたからです。
こうした経験があるため、欧米の医師たちはベンゾジアゼピンの投与にはかなり保守的なようです。
日本では恐らくベンゾジアゼピンは使われ過ぎなのですが、では、実際にはベンゾジアゼピンをどの程度の量と期間服用すれば依存が生じ、依存が成立するとどのような問題が起こるのでしょうか。