① 神経内科の対象疾患の部分症状として精神症状が現れる
たとえば、アルツハイマー型認知症の場合、記憶障害も目立たず、MRIなどで脳の萎縮が検知できないくらいのごく初期に、高率に抑うつ症状を呈します。このような患者さんは、まず精神科で治療を受け、痴呆が進行してくると神経内科にバトンタッチ、というのが一般的です。
また、進行した痴呆では、BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:痴呆の行動と心理症状)と呼ばれる様々な問題行動が生じます。
痴呆は本来的には神経内科で治療されるべき疾患ですが、行動障害や精神症状が強いと一般病棟でのケアが難しくなるため、精神科での管理が必要になる場合があります。
遺伝性の変性疾患で、不随意運動を主徴とするハンチントン舞踏病では、統合失調症様の精神症状や人格変化が認められることがあります。この場合もやはり精神科との併診が勧められます。
② 神経内科疾患の治療によって精神症状が現れる
有名なのはパーキンソン病で、治療薬であるドーパミン製剤の副作用で幻覚や妄想が現れることがあります。病状によっては精神科へのコンサルトが必要となります。
また、自己免疫疾患などの治療に用いられるステロイド製剤の副作用によって抑うつ症状や「ステロイド精神病」が現れることがあります。
イギリスではNHS(National Health Service)という国営医療制度が発達していて、住民は身体的・精神的不調を生じた場合、まず居住地域ごとに割り当てられたGP(General Practitioner)の診察を受けなければなりません。GPは、基本的にはどのような病気の初期対応もできるように訓練されたプライマリケア専門医です。このGPが、より専門的な治療が必要だと判断し、紹介状を作成した場合のみ、患者さんは専門医を受診することができます。
逆に言えば、GPの紹介が無い場合、専門医を受診することは非常に困難なのだそうです。