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睡眠薬と安定剤の正しい止め方 アーカイブ

2007年09月14日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (1)

……というタイトルを付けてみましたが,実のところ眠剤や精神安定剤を100%確実に,しかも苦痛や弊害なく止める方法があるかというと,残念ながら答はイエスではありません。

しばらくこのテーマで記事を書いていきますが,看板(タイトル)に偽りアリというご指摘を受ける前にまずこの点を強調しておきたいと思います。

ただ,眠剤や精神安定剤を止められない理由には大きく2つあります。
1つは,ある程度「仕方がなく」止められない場合。
もう1つは,止められるのに止められない場合です。
後者はある意味で医療過誤とさえ呼べると私は思っています。

以前に書いた「精神科の薬はクセになるか?」という一連の記事でベンゾジアゼピン系薬物の依存性について書きました。
眠剤や精神安定剤≒ベンゾジアゼピンですから,今回のシリーズでも同じテーマを扱うことになりますが,ここでは自分の勉強もかねて,ベンゾジアゼピン依存のより臨床的な側面と,依存の防ぎ方,依存が生じた場合の対処に重きをおいて記事を書いていきたいと思います。

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2007年09月16日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (2)

ここで扱う精神安定剤・睡眠薬(≒ベンゾジアゼピン)依存は,常用量依存(低用量依存,治療用量依存とも言います)にほぼ限定することにします。
例えば,非合法に入手したハルシオンを「トリップ」目的に大量服用するような人の治療法はこの記事の対象ではありません。
あくまで,何らかの精神疾患の治療のために医師から処方された薬を,処方されたとおりに飲んでいたのにも関わらず生じてしまうベンゾジアゼピン依存の治し方――最初にも述べたように,すべての常用量依存を治す方法は無さそうですが――について取り扱っていきます。

ではまずそもそも,常用量依存はどのように定義されるのでしょう?
ベンゾジアゼピンのどれくらいの量が「常用量」,で,どれくらいの期間服用すると依存が生じるのでしょうか。
実は常用量依存の確立した定義は存在しません。

目安として,よく知られた定義を紹介しておきます。

「ジアゼパム 30mg/日以下,あるいは同等量の他のベンゾジアゼピンを継続的に使用し,断薬時に明らかな離脱症状が生じること」(Hallstorm,1981)

「少なくとも3ヶ月間ベンゾジアゼピンを連日服用し,ベンゾジアゼピンの累積量がジアゼパム換算で2,700mgを超えるもの」(Busto,1986)

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2007年09月17日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (3)

前記事に載せた常用量依存の定義をご覧になるとわかるかもしれませんが,睡眠薬や安定剤の量は「ジアゼパム換算量(同等量)」で表されます。
これについても説明しておく必要があるでしょう。

臨床場面では,例えば,ハルシオンを飲んで寝つきは良くなったが,4~5時間で目が覚めてしまい,その後眠れないといった患者さんに,ユーロジンへの眠剤変更を提案する,といったケースがしばしばあります。
この時,多くの患者さんは「それは薬を強くするということですか?」と心配そうに質問されることが少なくありません。
精神科の薬なんてものは出来れば飲みたくはありませんし,薬が強くなるということは病状が良くないということを示唆する兆候ともとれるので,こうした患者さんの懸念はしごく健全なものです。それに対して煩わしげな対応をする医師はあまり良い医師とは言えないでしょう。

一方で,「ユーロジンはハルシオンよりも強い薬か?」(デパスはレキソタンより,ソラナックスはワイパックスより強い薬か? でもよいのですが)という質問に単純にイエスがノーかで答えるのが非常に難しいことも確かです。

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2007年09月24日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (4)

ボクシングの世界では,「パウンド・フォー・パウンド最強」という形容の仕方があります。
同じ体重の選手の中では最強,というほどの意味です

ボクシングファンの方でなくても何となくはご存知であろうと思いますが(私も熱心なボクシングファンではありません。亀田大毅 vs 内藤大助の世界戦はさすがにテレビ観戦すると思いますが),ボクシングは階級制の競技です。

体の大きさが違うと当然ながらパンチ力や打たれ強さが違うので,体重で階級分けしないと公平な勝負にならないということなのでしょう。

ベンゾジアゼピン系の精神安定剤や睡眠薬にも似たようなことが言えます。

以前の記事でベンゾジアゼピン系睡眠薬・安定剤の作用機序について簡単に述べたことがありますが,要するにGABAという脳内物質の働きをコントロールすることで抗不安作用や睡眠作用を発揮します。
脳内のGABA受容体にベンゾジアゼピン結合部位という「鍵穴」があって,この鍵穴に「ガッチリ」嵌まり込む薬ほど「強い」薬であるということになります。
この「ガッチリ」度を「親和性」と呼びます。

この親和性は薬ごとに違います。
例えば現行の睡眠薬ではハルシオン(一般名トリアゾラム)はベンゾジアゼピン結合部位との親和性がもっとも高い薬のひとつです。

ならば,ハルシオンが「強い」眠剤なのかと言えば,臨床的には必ずしもそうは言えません。

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睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (5)

処方箋を見るとわかりますが,ベンゾジアゼピン系の眠剤や安定剤は種類によって成分の含有量が全く違っています。

ハルシオン(一般名トリアゾラム)錠は薬効成分の含有量が0.125mgか0.25mgですが,ユーロジン(一般名エスタゾラム)錠の含有量は1mgか2mgです。
つまり1つの錠剤の中に含まれる有効成分の量が8倍も違っているこということになります。

何を言いたいのかというと,「睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (3)」で例として挙げた,「ユーロジンという睡眠薬はハルシオンよりも『強い』薬か?」という問いについては2通りの答があるということです。

1. 「ベンゾジアゼピン結合部位との親和性」という絶対的基準に照らせば,ユーロジンという「物質」はハルシオンという「物質」よりも弱い薬である。

2. しかしユーロジンはハルシオンの8倍もの量を1錠の中に含有させているので,ハルシオンの0.25mg錠とユーロジンの2mg錠のどちらが強いかと言うと,一般的にはこの2つはほぼ同等の「強さ」であると考えられている。

ということです。

ここで出てくるのが,「ジアゼパン換算量」または「等価換算量」という考え方です。

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2007年09月26日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (6)

恐らくこれは製薬会社側の工夫なのでしょうが,人間の不安を抑制したり人間を眠らせたりするために,どれくらいの強さでベンゾジアゼピン受容体を塞げばよいかがわかっているので,ベンゾジアゼピン受容体への親和性が高い物質は開発段階で1錠当たりの含有量を少なめに,親和性が低い物質は含有量を多めに,調節した上で医薬品として上市されているわけです。

それでは,「睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (2)」で述べた,ベンゾジアゼピンの常用量依存の定義に用いられている「ジアゼパム30mg」は,他の安定剤や睡眠薬に置き換えるとどれくらいの量に相当するのでしょうか。

ここで,「抗不安薬・睡眠薬の等価換算」という考え方を紹介しましょう。
出典は星和書店から発売されていた「向精神薬の等価換算」です。
名著だと思うのですが(古書にプレミアムがついているくらいです),なぜか現在は絶版になっています。

この本に,慶応大学の研究班が1999年に発表した抗不安薬・睡眠薬の等価換算表が載っています。この手の換算表はいくつかあるのですが,慶大版は臨床の感覚で見てもしっくりくるように思えます。

これによれば,ジアゼパム(商品名ではセルシン,ホリゾン他)5mgとデパス(一般名エチゾラム)1.5mgが等価とされています。
他の抗不安薬・睡眠薬では,ソラナックス(=コンスタン。一般名アルプラゾラム)0.8mg,ワイパックス(ロラゼパム)1.2mg,ロヒプノール(=サイレース。フルニトラゼパム)1mg,ハルシオン(トリアゾラム)0.25mg,マイスリー(ゾルピデム)10mgがジアゼパム5mgと等価です。

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2007年09月30日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (7)

今回は閑話休題……というか,本来予定していた順番とは異なる記事を書くことにします。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬ならびに睡眠薬,それらにたいする常用量依存,その裏返しとしての離脱症状,それを防ぎつつ常用量依存から脱する方法といった知識への患者のみなさんのニーズは高いようで,このシリーズを始めてから拙ブログへのアクセス数は増え続けていて,いくつかの支持的なコメントもいただいています。

関心を寄せていただくことも,期待を抱いていただくことも嬉しいのですが,一方で,次第に私の筆が重くなっていくことも確かです。

このシリーズの結末が,多くの読者の方が恐らくは期待されているであろうものにはならないからです。
結論を申し上げるならば,ベンゾジアゼピン系薬物を服用されている全ての患者さんがその服薬を止められるわけではありません。

これには,
①原病(たとえばうつ病)の寛解率が100%ではないので,その部分症状である不安や苛々,不眠を和らげるために用いられるベンゾジアゼピンが止められない,という医学的必然性に基づいた「やむをえない」服薬継続と,
②原病はとっくに治っているにも関わらず,処方医に常用量依存の知識がないために漫然とベンゾジアゼピンの処方が続けられ,その服薬期間や累積服用量があまりにも多すぎて,これから「正しい方法」で離脱を試みても,到底服薬終了までは持ち込めないために,悲劇的な意味で服薬を継続しなければならないといった2つのパターンがあります

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睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (8)

「睡眠薬と安定剤の正しい止め方」は存在します。
本来的にはそれは,「睡眠薬と安定剤の正しい使い方」と同義であるはずです。適切にベンゾジアゼピンを選び,期間や用量を限定して用いれば,そもそも依存は生じません。

前述したように,うつ病や躁うつ病,統合失調症といった疾患では,一定の割合で「難治例」と称される患者さんがおられ,抗うつ薬や気分安定薬,抗精神病薬といった,それぞれの疾患の本来的な治療薬や精神療法を用いても症状が改善しないために,対症療法であるベンゾジアゼピン系薬物を使用し続けざるをえない場合はあります。

原病が寛解する患者さんで,しかしベンゾジアゼピンの依存が生じてしまう方も,残念ながら存在します。
このシリーズで取り上げるのは,そうした患者さんを対象とした狭義の「睡眠薬と安定剤の正しい止め方」になります。

しかしながらそうした,「医原性で」,「不必要な」常用量依存(臨床用量依存)でも,あまりに長期に渡って持続すると,離脱はきわめて困難になります。

ベンゾジアゼピンの離脱法(止め方)については欧米でいくつかのガイダンスがありますが,これらをそのまま日本の実情に持ち込んでもまず使い物になりません。
欧米の患者さんに見られる常用量依存と,わが国のそれとは,用量や使用期間が桁が1つもしくはそれ以上違っているからです。

そのあたりを理解していただくためにも,次回以降,まずは欧米と日本とのベンゾジアゼピンの使用実態の違いについて述べていこうと思います。

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2007年10月05日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (9)

昨日の大阪は暑かったです。
学会は今日が最終日。収穫があったらこのブログ上で報告します。

今日は「睡眠薬と安定剤の正しい止め方」の番外編。文献の紹介です。
Stephen M. Stahlの「暗黙の了解:ベンゾジアゼピンは 今でも不安障害治療の主要治療薬」

Journal Clinical Psychitryという米国の専門誌があります。
米誌でも有名どころでインパクト・ファクターも高く,日本の臨床家にもよく読まれている(ことが望まれる)雑誌ですが,この巻頭に「Brain Storm」という名物コラムが連載されています。「暗黙の了解:ベンゾジアゼピンは 今でも不安障害治療の主要治療薬」はその一編。

で,その和訳がWeb上にアップされていて,誰でも合法的にアクセスすることができます。

ここまで,米国ではベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬の使用が少ないことをこのブログ上でも強調してきしてきましたが,もちろん全く使われていないわけではありません。それどころか実は……というのが「暗黙の了解:ベンゾジアゼピンは 今でも不安障害治療の主要治療薬」の内容。

Stahlの文章は分かりやすいので,非専門家が読んでも十分理解できると思います。Stahlはベンゾジアゼピンの短絡的な否定論に懐疑的なスタンスですが,それでも日本のような長期大量漫然投与を推奨しているわけでもありませんね。

Stephen M. Stahlは,毀誉褒貶はあるようですが,米国における臨床精神薬理学の第一人者で,「精神薬理学エセンシャルズ―神経科学的基礎と応用」「精神科治療薬処方ガイド」といった著書があります。
どちらも専門書で(それゆえに高額で),内容も高度なのですが,わかりやすさは随一。私は名著だと思いますね。
向精神薬を理解する上で,コメディカルスタッフや患者さんにもお勧めです。


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2007年12月04日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (10)

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日本における1998年の抗不安薬(≒ベンゾジアゼピン系抗不安薬)の年間処方数は1億2千万件を超えています(文献1)。
「年間処方数」という言葉自体がぴんとこないかもしれませんが,要するに(赤ん坊から高齢者までひっくるめて)日本国民が年に1度はベンゾジアゼピンを処方されていると解釈すればよいでしょうか。

この数字は比較のために挙げました。
米国の抗不安薬(≒ベンゾジアゼピン系抗不安薬)の年間処方数は2千万件,英国では1千万件未満ですから,日本ではベンゾジアゼピンの処方件数は欧米各国の6~20倍にも及ぶことになります。
人口の違いによる調整を加えずとも,日本の処方件数が図抜けていることがおわかりになるでしょう。

しかもこれはあくまで「件数」であって,1件ごとの処方量は反映されていません。手元に数字はないのですが,1人の患者さんに1回に処方されるベンゾジアゼピンの用量もまた,日本は図抜けているのではないかと予想します。

英国でも米国でも,学会や規制当局が,ベンゾジアゼピンについては急性の不眠や不安に対する短期・頓服での使用を推奨し,長期使用を避ける指導がなされています。

日本ではようやく近年になってベンゾジアゼピンの依存の問題が少しずつ専門誌などで取り上げられるようになってきましたが,学会から実効性のあるガイドラインが発表されたり,厚生労働省から規制が加えられたりといった効き目のありそうな方策はまったくといってよいほど講じられていないのが現実です。

参考文献
1. 村崎光邦:わが国における向精神薬の現状と展望―21世紀を目指して―.臨床精神薬理 4:3-27,2001
2. 田島治:ベンゾジアゼピン系薬物の処方を再考する.臨床精神医学 30:1065-1069,2001

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2007年12月09日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (11)

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さて,前置きが長くなりましたが,今回から睡眠薬安定剤(≒ベンゾジアゼピン)の正しい止め方について述べていくことにします。
従来の,それも出来れば日本の論文を参考にした方法に,猫山自身の工夫を加えた私案だと思ってください。

この方法には,以下のような制限や留意点,注意点があります。

  1. 同じベンゾジアゼピンでも,安定剤と睡眠薬とで,止め方に違いがあります。
  2. 患者さん自身が,ベンゾジアゼピンを止めようという意思を持っていることが大前提です。
  3. 最適応は原病(うつ病や不安障害)が寛解しているにも関わらず依存が生じているために眠剤や安定剤が止められずにいる患者さん,もしくは精神疾患以外の疾患(腰痛など)に対してデパスなどが長期連用されたためにベンゾジアゼピン依存が生じてしまった患者さんです。
  4. 相対的な適応は,原病が寛解にまでは達していなくても,ベンゾジアゼピンの標的症状に対して代替療法がある患者さんです。
  5. そもそも,不安や不眠を完全に取り去ることと,ベンゾジアゼピンからの離脱は両立しません。つまりほとんどの患者さんでは「ある程度の症状はあるけれど,ベンゾジアゼピンは止められているか,頓用程度で済んでいる」という状態になるのが最終目標になります。
  6. 以前にも述べたように,あまりにも高用量,長期間のベンゾジアゼピン慢性投与を受けてきた患者さんは,そもそも離脱は不可能な場合が少なくありません。またこの場合の「高用量」や「長期期間」には個人差があり,一概に定義することはできません。
安定剤と睡眠薬とで異なる方法が用いられる必要がある理由は,第1には,安定剤では用いることができる「長時間作用型同効薬への置換」(デパス→メイラックスのような)という戦略がそのままでは用い難いこと(短時間型の眠剤を安易に長時間型の眠剤に置き換えれば,眠気のオーバーハング=日中への眠気の持ち越しが起こります),第2に反跳性の不安よりも反跳性の不眠に耐え続けることの方が難しく,また実害も出やすいこと,第3には依存性がより少ない代替薬が無いこと,が挙げられます。

というわけで,安定剤と睡眠薬に分けて,次回以降具体的な方法を述べていこうと思います。

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2007年12月19日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (12)

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例として,現在次のような処方を受けている患者さんがベンゾジアゼピンから離脱する(ベンゾジアゼピンを止める)場合を考えてみましょう。

  1. パキシル 40mg/1×夕食後
  2. デパス 3mg
    ソラナックス 1.2mg/3×食後
  3. ハルシオン 0.25mg
    ロヒプノール 2mg
    アローゼン 1g/1×就寝前

よく見かける処方ではないでしょうか。

しかし処方が同じだからといって,離脱法も同じというわけにはいきません。
ざっと思い浮かぶだけでも,以下の要素を考慮してベンゾジアゼピンの減量・中止を考えなければならないでしょう。

そもそも診断は?

年齢は? 性別は?

罹病期間は? 服薬期間は?

急性期? 慢性期?

改善している? 回復している? 寛解している?

最初からこの処方? 徐々に増えてきてこの処方内容で固定? それとも逆に,元々はもっとたくさんの薬を飲んでいたのを減量してこの処方になった?

そして……。
患者さん自身は減薬を望んでいるでしょうか? 服薬に対するご家族の理解度は?

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2007年12月20日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (13)

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不確定要素が多いと解が導き出せませんので,睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (13)で例示した処方を受けている患者さんのプロフィールは以下のようなものだということにしましょう。

[症例] 24歳,男性
[診断] パニック障害
[病歴] コンピューター関係の営業職。大学卒業後より現職。就職から1ヶ月ほどたった2年前の6月頃から営業先で特に誘因無くパニック発作が出現するようになった。仕事上のストレスは自覚していなかった。次第に発作頻度が増すようになったため,近医(心療内科)を受診。パニック障害の診断でデパス 3mg/3×食後を処方された。
その後発作頻度は劇的に減り,仕事は普通に行えていた。服薬開始2ヵ月後に自己断薬したところ,強い不安と不眠が出現した。心療内科で相談したところ,ソラナックス 1.2mg/3×食後とハルシオン 0.25mg/1×寝前が追加された。
仕事が忙しかったため,以後は診察を受けずに薬だけを受け取りに行っていた。断薬時に不調を呈した経験から服薬を怠ったことはなかった。1年前からハルシオンを飲んだけでは眠れないようになったため久しぶりに受診したところロヒプノール 2mg/1×寝前が追加された。
以後,パニック発作,不眠ともに認められず,自覚的には副作用も感じていなかったが,次第に薬の種類が増えていくことに不安を感じ,会社の産業医に相談したところ,専門医でセカンドオピニオンを受けることを勧められ,大学病院の精神科を受診した。
この精神科での担当医は#1. パニック障害(寛解状態),#2. ベンゾジアゼピン依存,の診断を付し,現在通っている心療内科の治療方針が望ましいものではないとの見解を示した。
患者はこの大学病院での治療と服用薬の減量・中止を希望した。
新主治医はまずデパスを中止した。しばらくは問題なく経過していたが,デパス中止1ヵ月後に,特に誘因なくパニック発作が出現したため,新主治医はパニック発作が完全寛解には至っていないと判断し,デパスを再開した上でパキシルを開始し,40mg/日まで増量した。
その後パニック発作は認められず,半年が経過している。新主治医はベンゾジアゼピンの減量を提案し,患者本人もそれに同意している。

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2007年12月26日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (14)

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さて,この患者さんは,ことほど然様にありがちな経緯で,現在4種類のベンゾジアゼピン系薬物を服用していることになります。

まず,目安として,ジアゼパム換算量を算出してみましょう。
慶大精神神経科臨床精神薬理研究班1999年版(出典:「向精神薬の等価換算」,星和書店)に基づけば……

デパス 3mg/日=ジアゼパム 10mg/日
ソラナックス 1.2mg/日=ジアゼパム 7.5mg/日
ハルシオン 0.25mg/日=ジアゼパム 5mg/日
ロヒプノール 2mg/日=ジアゼパム 10mg/日

よって,ジアゼパム総換算量は32.5mg/日です。
よくみかける処方ではありますが,改めて計算してみるとけっこうな量を飲んでいることになります。「睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (2)」で引用したHallstormらによる常用量依存の定義が「ジアゼパム 30mg/日以下,あるいは同等量の他のベンゾジアゼピンを継続的に使用し,断薬時に明らかな離脱症状が生じること」ですから,例示した患者さんは,Hallstormらが想定した「常用量」を超えた量のベンゾジアゼピンを年単位で飲み続けていることになります。

欧米で考案された定義やベンゾジアゼピン離脱法が日本でそのまま用いがたいのにはこのような背景があります。
日本における「常用量」は,欧米では往々にして「乱用量」と見做されるような用量×服薬期間になってしまうのです。

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2008年01月26日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (15)

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私であれば,まずどれだけの期間をかけてベンゾジアゼピン精神安定剤睡眠薬)を中止するかを決め,それを患者さんに告げます。

この患者さんの場合,2年間をかけてベンゾジアゼピンから離脱することを目標にします。
この患者さんのベンゾジアゼピン依存が,2年間をかけて形成されたものだからです。

村崎(参考文献-1)は,1~2週間ごとに1日量の1/4~1/2ずつ減量し,4~8週間をかけてベンゾジアゼピンを中止していく方法を提唱しています。

Higittら(参考文献-2)は,過去に行われたベンゾジアゼピンの離脱に関する研究をレビューし,16週間をかけるプログラムが推奨されるとしています。ちなみにHigittらは,約3分の1のプログラム参加者が問題なくベンゾジアゼピンを中止することができるが,多くの患者は離脱症状が残存したり,ベンゾジアゼピンを再開してしまうようだ,と述べており,ベンゾジアゼピン離脱の予後についてあまり楽観的な見方をしていません(この論文は全文が公開されているので,ご興味があれば下記のリンクからご覧になってみてください。英文ですが)。

エビデンスがあって決めたわけではありませんが,私は,ささやかな経験から,ベンゾジアゼピンの依存は,それが形成されたのと同じ期間をかけてようやく大過なく離脱までもっていくことができると考えています。

少なくとも,長期間の病歴をもつベンゾジアゼピン依存の患者さんが,4週間や16週間ぽっちで依存を脱することができた例を,私は寡聞にして知りません。

参考文献
1. 村崎光邦:抗不安薬の臨床用量依存.精神神経学雑誌 98:612-621,1996
2. Higgitt AC, Lader MH, Fonagy P: Clinical management of benzodiazepine dependence. Br Med J (Clin Res Ed) 291(6497):688-90, 1985

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2008年02月10日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (16)

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次に睡眠薬と安定剤のどちらから減量を開始するか,ですが,これもケース・バイ・ケースです。
私ならば,この患者さんの処方を一見して,安定剤の減量から開始します。

ぐだぐださんからもご質問をいただきましたが,そもそも,ベンゾジアゼピン系薬物というカテゴリーの中では,睡眠薬と安定剤の区別は恣意的なものに過ぎません……でした。
以前にも書きましたが,ベンゾジアゼピン系薬物はGABA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に働きかけてその作用を発揮します。
この,同じような化学構造と作用機序を有したいくつもの物質の中で,なぜか抗不安作用が強いものと催眠鎮静作用が強いものとがあり,前者を便宜的に精神安定剤,後者を睡眠薬と呼称してきたわけです。

最近になって,ベンゾジアゼピン結合部位に少なくとも2つの種類があることがわかってきました。
これらのサブタイプは,1つはω(オメガ)1受容体,もう1つはω2受容体と呼ばれています。
ω1受容体とω2受容体は脳内分布も,機能も異なっています。
ω1受容体は催眠鎮静作用に,ω2受容体は抗不安作用に関連しています。

従来のベンゾジアゼピン系薬物はベンゾジアゼピン結合部位のサブタイプに対する選択性がありませんが,それでもω1受容体に結合しやすいものと,ω2受容体に結合しやすいものとがあります。
ベンゾジアゼピン系薬物の中で「なぜか抗不安作用が強いものと催眠鎮静作用が強いものとがあ」ると書きましたが,その「なぜか」が,このω1/ω2受容体への結合バランスだったわけです。

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2008年02月17日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (17)

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つまり,ベンゾジアゼピン系薬物の中で,ω1受容体に強く作用するものが睡眠薬,ω2受容体に強く作用するものが抗不安薬安定剤であると言うことができます。

ぐだぐださんからのコメントの中でまた,「遥かに強いとされているベゲタミン等の方がまだましと思えて」しまう,というくだりがありますが,これに関しては私も部分的には賛成です。

ω1受容体に作用する睡眠薬にもω2受容体に作用する抗不安薬にも依存性があります。
しかし人間の脳内の複雑な神経ネットワークの中で,ベンゾジアゼピン結合部位(ω1受容体とω2受容体)だけが催眠や抗不安作用の発現に関与しているわけではありません。

ω1受容体もω2受容体も介さずに催眠作用や抗不安作用を発揮する,依存性が無い薬物があるのであれば最初からそれを使えばいいわけです。

そういった薬があればベンゾジアゼピンから離脱する――睡眠薬と安定剤を止めるためにも有用です。
実際,私はそういった薬を要所要所で使います。

しかしその「そういった薬」にベゲタミンは含まれません。
ベゲタミンにはA錠とB錠があって,どちらもクロルプロマジンと塩酸プロメタジン,フェノバルビタールの合剤なのですが(AとBでは配合比が異なるだけです),このフェノバルビタールが曲者なのです。

フェノバルビタールはバルビツール系と一括りにされる睡眠・安定剤のひとつです。
かつて全盛を極めていた頃には,バルビツール系薬物は臨床の場で頻用,もしくは乱用
されていました。
ちょうど現在のベンゾジアゼピン系薬物のように。

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2008年03月13日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (18)

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「これらに共通しての多くの人の心配は依存性である。処方量を守り、生活を整えていく限り、問題はないので安心して欲しい。『睡眠薬は依存性があるが安定剤なら安心だ』という話も間違いである。どちらも処方量を守っていれば問題はない。一方、イソミタール、ブロバリン、市販のドリエルなどは依存性が心配なら控えた方がよいだろう。われわれは専門の立場で、依存性については心配ない、自然にやめられると自信を持って言えるが、なかには『わたしは信じない』と言う人もいる。しかしそれでも医者に来るのはなぜだろうか。何とか解決したくて医者を訪れるのだと思う。噂を信じているのだとしたら、エビデンスがある。漠然と不安になっているのだとしたら、これもエビデンスを信じてもらいたい」

引用が長くなりましたが,新橋心療内科という実在する心療内科クリニックのサイトからのコピー&ペーストです。
このクリニックを運営し,この文章を書かれたのであろうドクターを個人攻撃するつもりはありませんが,やはりこの文章は患者さんに誤解を与えかねない表現を含んでいると言わざるをえないでしょう。

エビデンスということならば,昨今は常用量依存(低用量依存)に関するエビデンスが多く示されています。つまり「処方量を守っていれば問題はない」とは言えないというのが最新の知見なのです。

一方で,市販薬のドリエルは抗ヒスタミン薬なので依存性の心配は大きくはないと思います。少なくとも処方薬であるベンゾジアゼピンよりも依存性が強いというエビデンスは無いと思います。

専門家を自認する心療内科医のドクターですらベンゾジアゼピンの常用量依存(低用量依存)に関する理解はこのようなものなので,わが国の精神科薬物療法がこのようなものであるのも致し方ないのかもしれません。

話が逸れましたが,このドクターが述べている「イソミタールは依存性が心配なら控えた方がよいだろう」という部分は確かにその通りです。

このイソミタールが,現在も臨床使用されているバルビツール系薬物の中ではもっとも頻用されているもののひとつです。

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2008年05月28日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (19)

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前の記事で再開は少し先と書きましたが,勢いで書き出してみることにしました。

一昔前のドラマなどで,睡眠薬を過量服用して自殺するという描写をしばしば目にすることがありました。
当時は睡眠薬というのは「たくさん飲むと死ぬ薬」だと認識されていたわけですが,この場合の睡眠薬というのがほぼバルビツール(酸)系睡眠薬と同義です。

バルビツール系睡眠薬・安定剤は脳の広範な領域に作用し、過量投与によって呼吸中枢、循環中枢の抑制が生じます。
安全域が狭い(処方量と致死量が近接している)ため、処方が難しく、また、日本ではあまり気にされていなかったようですが、精神的・身体的な耐性・依存性が生じやすいことが臨床上の問題とされていました。

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬・安定剤は、こうしたバルビツール系睡眠薬・安定剤の欠点を克服すべく開発された経緯があります。
実際のところベンゾジアゼピン系睡眠薬・安定剤の安全域の広さはバルビツール系の比ではなく、耐性や依存性も生じにくいことは厳然とした事実です。

しかしながら、精神科臨床においてバルビツール系睡眠薬・安定剤がベンゾジアゼピンに完全に駆逐されたわけではありません。
前述のように、イソミタール、フェノバルビタールといった薬はまだまだ現役ですし、何より、一部の医師にも患者にも根強い人気があるベゲタミンに、このバルビツール系睡眠薬(フェノバルビタール)が含まれているのです。

そしてこのことが、私が、ベンゾジアゼピンの離脱のためにベゲタミンを用いることに否定的な理由です。

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2008年06月08日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (20)

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さて,更新が滞っているうちにやや横道に逸れた「睡眠薬と安定剤の正しい止め方」ですが,話を本筋に戻すことにしましょう。

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (13)」で示したような経緯で「睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (12)」に記載したような処方になってしまった24歳の男性患者さんのベンゾジアゼピンの減量・中止の仕方です。

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (16)」でも述べましたが,なかば感覚的に,睡眠薬よりも先に日中の安定剤から減量していく方法を私なら選びます。
本来のベンゾジアゼピン系薬物の標的症状であるパニック発作がパキシルでコントロールされていて安定剤の存在意義が希薄になるつつことと,デパスとソラナックスという同効薬が併用されているのはどうにも下品に感じされるからです。

主治医の側の趣味や,患者さんの側の意向もあるでしょうから,この辺りの減薬の導入は,よく相談したうえで柔軟に対応してもよいでしょう。

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2008年06月24日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方:番外編

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もしくは,メールマガジン「メンタルクリニック.mail」の編集方針改定のお知らせ,といったところでしょうか。

5月28日のエントリー「メールマガジン始めます」にも書いたように,本ブログのメールマガジン版である「メンタルクリニック.mail」が既に始まっていますが,当分は私はメールマガのために新しい記事は書かないつもり(書く余裕がない,ということですが)つもりでした。

発行人である石動氏にもそれで納得していただいていたのですが,私の方から早くも方針を変えさせていただくことにしました。

直接のきっかけは「睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (20)」のコメント欄にいただいたタマゴ丼さんからのご質問でした。
これに回答することは類似の問題に悩む多くの患者さんにも役立つと思われたので「睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (21)」で取り上げて……と考えてはたと思い直しました。

現在進行中の「睡眠薬と安定剤の正しい止め方」もそうですが,私はシリーズ形式で記事を書くことが多いにもかかわらず,読者の方からのご質問にシリーズ途中で記事を用いて回答するためにしばしば脱線気味になり,シリーズを通しての論旨がわかりにくくなる傾向があるようです。

今回のシリーズも既にそうなりかかっていますし,根深い問題であるだけに,今後も個別の患者さんに即した質問やコメントをいただくことはありそうです。
その度にシリーズの進行が止まり,方向性が曖昧になるリスクを避けるために,本ブログに寄せられたご質問の中で公益性の高いものについてはメールマガジンを用いて回答させていただくことにしました。

既にメルマガでは告知済みですが,週2回発行しているうちの水曜日発行分がこの回答に充てられます。
どのような質問をメルマガでの回答の対象とするか,一つの質問に何回分のメルマガを用いて回答するか,等々,しばらくは手探りの状態が続くと思いますが,暖かく見守っていただけますと幸いです。

>>>睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (21)


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2008年07月06日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (21)

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安定剤の減量方法ですが,これまた感覚的に,私ならデパス(エチゾラム)から減らしていきます。過去にデパスの自己断薬でベンゾジアゼピンの離脱症状を起こしたことがあるので,あるいは患者さんが尻込みするかもしれませんが,これについては患者さんが減薬のモチベーションを保てるような説明をして受け入れていただくしかないでしょう。

ソラナックスではなくデパスの減量を先行させることに敢えて理由付けをするのであれば,臨床的にデパスの減量がいちばん難しいような印象を持っているからです(エビデンスはありません)。
先にソラナックスを減量・中止して,安定剤がデパスだけになってからデパスの減量を開始するよりは,ソラナックスがベースにある状態でデパスを減量するほうが,なんとなく安心だというだけです。

患者さんがデパスの減量に強い不安を表出するようならソラナックスから減量にとりかかってもかまいません。
減薬に対する不安が強いと,それが呼び水になってパニック発作が起こることがありえます。その場合,ベンゾジアゼピン減量の再チャレンジはかなり難しいものになるでしょう。

減薬に対する不安でパニック発作が起こりやすくなり→その状態で減薬を行うと案の定パニック発作が起こり→ベンゾジアゼピンの量を元に戻したものの,患者さんの減薬への不安はより強まる→減薬の再チャレンジでまたパニック発作……という悪循環は絶対に避けなければなりません。

ベンゾジアゼピンの離脱は成功し続けなければならないのです。
このため,私の場合,減量幅や,減量にかける期間はかなり保守的に見積もります。

この患者さんの処方ならば,デパスの減量開始に際して,私ならば処方箋を書き換えることはしません。

>>>睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (21.5)


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2009年05月07日

睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (21.5)

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おひさしぶりです。
3月1日以来のエントリー投稿となります。
実のところ、まったくブログに手をつけられないほど多忙が続いていたというわけではないのですが、間が開けば開くほど書きづらくなってしまい、結果的には2ヶ月半もずるずるとブログを放置する結果となってしまいました。

ゴールデンウィークでリフレッシュした……というわけでもないのですが、リハビリがてら、更新をさぼっていた間にいただいていた質問にお答えするところから再開しようと思います。

ブログランキングなどは更新が滞ると素直に下落してきますが、それでも拙ブログに目を留めてくださる読者の方々はおられ、コメント欄に質問や励ましのお言葉をいただきましたことにお礼を申し上げるとともに、ご質問に対する回答が遅くなりましたことをお詫びいたします。

さて、再開第1回目は、「睡眠薬と安定剤の正しい止め方 (21)」のコメント欄にさかきさんからいただいたご質問への回答です。

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